悠木の相談①
「しじょー」
「ん?」
「相談がある」
「・・・・え?」
昼休み。
定番の昼寝場所、図書室で。
12月も中旬に差し掛かった頃の、それは突然の事だった。
悠木が、俺に、相談っ?!
やばっ、俺、なんかやらかしたかっ?!
悠木が寝ている間にやっておこうと持ってきた分厚い過去問集が、力の抜けた手から滑り落ち、ガタンと派手な音をあたりに響かせる。
もしかして、俺のカテキョ辞めるとか、か・・・・?
慌てて過去問集を拾い上げて悠木を見ると、いつもは既に寝ていておかしくない悠木が、至極真面目な顔で俺を見ていた。
「・・・・なんだ、相談て」
恐る恐る聞いた俺の耳に飛び込んできた悠木の言葉に。
「夏川さんに、告白したい」
思考が一時停止した。
あれ?
俺、耳がおかしくなったのか?
今、『夏川さんに、告白したい』って、聞こえたような気がするんだけど・・・・
「・・・・悪い。今、なんて?」
聞き直すも、
「夏川さんに、告白したい」
聞こえた言葉は、先ほどと全く同じ。
悠木は、この手の冗談を言う奴ではない。
少なくとも、俺はそう思っている。
て、ことは。
「それ、本気か?」
「うん」
答える悠木は、至って真面目だ。
て、ことは。
一時停止した思考が、ゆっくり活動を再開する。
悠木が、告白?
夏川に?
確かにな。夏川は男じゃないし。だから、悠木にとっては恐怖もないだろうし。
言われてみれば、悠木は夏川にはかなり懐いている。
でもっ!
そんなにっ?!
そこまでっ?!
「そんなに、夏川のことが・・・・」
「うん」
当然のように、悠木は頷く。
俺は体中から力が抜けていくような気がした。
悠木、そんなに夏川が好きなのか?
俺じゃやっぱり、ダメってことなのか?
悠木がそう望むなら、俺にはどうこう言う資格なんて何も無いけど。
でもまさか、夏川に悠木を取られるなんてな・・・・
そこまで考えて、ハッと気づく。
つーか、夏川には藤沢がいるだろっ!
どーすんだよ、悠木っ!
「藤沢にはもう、言ったのか?」
「うん。しじょーにも、協力してもらおうって」
悠木の言葉に、俺は耳を疑った。
ちょっと待て。
やっぱり俺、耳がおかしくなったのか?
それとも、頭がどうかしちまったのか?!
「藤沢が、ほんとにそう言ったのか?」
「うん」
なんで?とでも言いたげに、悠木は小首を傾げて俺を見る。
嘘だろ、藤沢!
お前がいくら悠木を大事に思ってるからってっ!
つーか、悠木っ!
お前もほんとに、それでいいのかっ?!
「しじょー?」
「悪い、ちょっと寝る」
混乱した頭を持て余し、俺は悠木がいる方とは反対側に顔を向けて、机の上に突っ伏した。
もちろん。
昼休み終了の予鈴チャイムが鳴るまで、一睡もできなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます