第42話 新条ツヨシ

 新条しんじょうツヨシは、構えていた。

 何度もイマジン空間を展開したカフェがある。そこで戦いが繰り広げられていることは必定ひつじょう

 ワタシが、正さねばならない。

 ツヨシは、熱い心をもって決意を固めていた。

 まずは女性に道をゆずる。

「いらっしゃいませ」

 ロイヤルパルスにやってきた、ボブカットの女性。その客に、店員があいさつをした。

 カフェの扉を開くツヨシ。

「ワタシは、すべての女性の騎士!」

「お、おう。いらっしゃいませ」

 店員の男性は明らかに引いている。だが、客なので注文を取らざるを得ないようだ。

「ご注文は?」

「彼女の、笑顔さ」

 会話がかみ合っていない。なんて思うのは素人。ツヨシの中では、なんらおかしくはない。すべては女性のために。

「なんなの、この人」

 だが、肝心かんじんの女性も困り顔。これは、説明する必要がある。ツヨシはそう考えた。

「望みは、すべての女性の幸せさ」

「望み? お前、まさか」

「ワタシの名は、新条しんじょうツヨシ。いでよ、カンサ・ディッセ!」

 カードを取り出して、カンサを呼び出したツヨシ。

 ディッセの武器は細身の剣。何もせず、待機していた。

 色が変わっていないので、店員の男性がカンサ使いということは一目でわかる。ツヨシには、いつまででも待つ心構えがあった。

 しびれを切らしたようで、店員もカンサを呼び出す。イマジン空間を開きっぱなしにするとマモノが現れるため、戦わざるを得ない。それが素人の浅はかさ。

「カンサロウケ・ジャニュ!」

 紫色に染まった店内で、よっつのかたまりがその色に染まっていない。ボブカットの女性は、紫色になって変な顔をしていた。

 マスターの男性も紫色に染まっている。もちろん、変な顔をしていた。

 ディッセとジャニュの戦い。

 ジャニュが、すこし軽い音をひびかせる。

 ロウケの力は強く、剣のひとぎでカフェはバラバラになった。

 ツヨシは恐怖した。しかし、ここで引くわけにはいかない。すぐに美しい女性のほうを見て、平静さを取り戻した。

「あーっ。カフェが」

「なになに?」

 やはり、女性にはイマジン空間の様子もカンサも見えていない。

 これ以上の戦いは危険。そう判断したツヨシが、会話に打って出る。作戦は成功したようだ。

「ふっ。やるな。お前、名前は」

兜山かぶとやまアラタ」

「アラタか。また会おう!」

 カードをしまうツヨシ。カンサ・ディッセが消える。

 アラタもカードをしまった。カンサロウケ・ジャニュが消える。

 去っていくツヨシ。きわめて自然に、その場をあとにした。

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