第三章 新たな力

第33話 苛立ち

 路地裏。人影はひとつだけ。

 あまり厚着をしていない男性が、カードを右手に持っている。

 イマジン空間の中。

 カンサバトルは起こっていない。

 ソウオンのカンサ・エイプが仁王立ちしていた。

 カンサとは、鎧姿の人物。とはいえ、人間ではない。謎の物体である。

 カンサを召喚すると、紫色のイマジン空間が展開する。

 そこに、突然マモノが現れた。ゾウのような見た目。イマジン空間を長く展開しつづけると、マモノが発生するのだ。

 建物が壊れ、バキバキと音が鳴る。

 そこに金属音がひびいた。素手でマモノとやり合っていく、エイプ。

「おらおらァ!」

 爆発が起こる。一定のダメージを受けたため、マモノが消滅したのだ。

 そのあと、何体目かのマモノを退治した。

「食い足りねェ」

 ソウオンが嘆く。

 どうやら、カンサを倒さないと満たされないらしい。

 それを、少女が見ていた。こっそりと。前にソウオンに助けてもらった少女の名は、山口やまぐちリエ。


「では、いくぞ」

「望むところよ」

 カードを右手に持つ二人が、おおげさに構える。

「カンサ・フェブ!」

「カンサ・マーチ!」

 駅の近くの公園が、イマジン空間に包まれた。紫色で染まる。街を行く紫色の人々は、あまり厚着をしていない。

 戦う二人。

 ガシャンガシャンと音がひびく。

 壊れていく、周りの建物。

 ミズチは焦っていた。

 奥の手だ。ネネのカンサ・マーチが飛び、いらだちをあらわにするミズチ。

「オレにも、ロウケの力があれば」

 マモノは現れていない。

 空中から矢は飛んでこなかった。

 ネネが、ミズチの様子がおかしいことに気づいて戦いをやめたのだ。

 カンサ・マーチを戻した。

「今日はここまでにしようよ」

「そうだな」

 ミズチが同意して、カンサ・フェブを戻す。強く握られた右手は、しばらく開かれることがない。

 イマジン空間が消えていった。

 壊れていたはずの建物も元に戻った。

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