第20話 オーガ

 外は寒い。カフェの中は暖房が効いていた。

 アラタが働くカフェに、来客がやってくる。

「あんたは」

「あんたじゃなくて、梛川なぎかわササメ。いい加減、覚えなさい」

「マスター、ちょっと、用事が」

問答無用もんどうむよう。いきなさい。カンサ・ジュラ!」

「カンサ・ジャニュ!」

 カードを構える二人。イマジン空間が広がり、辺りが紫色に染まっていく。カンサ使いとカンサをのぞいて。

邪魔じゃま!」

 ジュラの槍が大きくはらった。紫色の建物が、音を立てて崩れていく。

「あーっ。み、店が」

「どうした、アラタ」

 マスターである内藤ないとうナオツグは、カンサ使いではない。よって、この惨状さんじょうが見えていないのだ。アラタが複雑な表情になる。

「な、なんでもないです」

「よそ見をするとは、余裕か」

 ササメと戦うアラタ。

 お互いに召喚した鎧、カンサを使って、激しい戦いを繰り広げている。戦いのさなか、アラタがあることに気づいた。

「そういえば、寒くないな」

「この妙な空間の力であろう」

 話しながら戦う二人のもとに、さらなる来客がおとずれた。現れたのは、マサト。

「誰だ?」

「お、お前は――」

 ササメの言葉をさえぎり、マサトが口を開く。

泉上いずみかみマサト。今日の運勢は……調べるまでもなさそうだ」

「カンサ使いか」

 紫色に染まっていないので、一目でわかる。だが、アラタはあえて口にした。決意を述べるように。

楠堂くすどうミズチから聞いていないのか。兜山かぶとやまアラタ」

 フルネームで呼ぶササメ。

「ミズチからも、ネネからも聞いてないぞ」

 アラタは戸惑っていた。追い打ちをかけるように、マサトがカードを取り出す。右手にカンサのカード。そして、左手にロウケのカードを持つマサト。

「カンサロウケ・オーガ!」

「ロウケ?」

 アラタは、初めて見る現象に驚いていた。その感情は、すぐに別の感情で上書きされる。

 ササメの目があちこちを向いた。

「速い」

「なんだ、こいつは」

 ものすごい速さで動くオーガ。とても人間ができる動きではない。目で追いきれないほどに素早く、二人はおろおろしている。

 やはり強い、マサトのカンサロウケ・オーガ。シャープな見た目のとおり、動きが速い。しかも、盾しか持っていないのに力まで強い。

 ラストアーツを使うまでもなく、ジュラが撤退に追い込まれる。去っていくササメ。

「覚えておれ」

 ジャニュは、構えたまま。アラタが、いぶかしげに問いただす。

「なぜ、おれを見逃す?」

「話をするためさ」

 ところが、そのときマモノが現れた。エイのような見た目。

「なにっ」

 反応が遅れたアラタを制して、マサトが告げる。

「見ていろ。ラストアーツ!」

 カンサロウケ・オーガの特別な大技。シールドバッシュで、エイのようなマモノはあっという間に倒された。

 大きな爆発が起こる。カフェの跡地で。

「す、すげぇ」

 アラタは、素直に称賛していた。脅威として恐れるのではなく、尊敬のまなざしを向けている。

 カンサをしまう二人。

 消えていくイマジン空間。カフェも元通りになる。

「さて、話をしようか」

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