第18話 少女

 二人目が脱落してから数日後。

 ソウオンは、駅前の広場でふたたびイマジン空間を展開していた。紫のドームが展開され、中が染まっている。

 駅から出る人たちも、行き交う人たちも、ほとんどソウオンのことを見ていない。

 ソウオンが紫色に染まっていないことは、普通の人には分からないのだ。

 鎧姿のカンサ・エイプは、腕組みをして立っていた。

 そして、誰も来なかった。

「腹立たしい奴らだ」

 出現したマモノは一体だけ。トカゲのような見た目。

「うっ」

 近くにいた少女の体力を奪い始めるマモノ。

 右手にカードを持つソウオンが、舌打ちする。

「ちッ」

 あごで指示を出すソウオン。エイプが走る。大きく構えた。

 ソウオンのカンサ・エイプは、通常攻撃でトカゲのようなマモノを倒した。

 爆発が起こる。もちろん、これを見る者もソウオン以外にはいなかった。

 味気ないといった雰囲気。もっと歯ごたえが欲しそうなソウオン。カードをしまい、カンサ・エイプを消した。

 紫色が薄くなっていく。つづいて、イマジン空間が消えた。

 壊された建物はないので、景色にそれ以上の変化はない。

 ソウオンが立ち去ろうとする。そこへ、思いもよらぬ言葉がかけられた。

「ありがとう」

 ソウオンが振り返ると、さきほどの少女がいた。普通の人には、イマジン空間もカンサも、マモノも見えないはず。出てきたのは、当たり障りのない言葉。

「俺様に用か?」

「助けてくれたの、わかるよ。だから、ありがとう」

「へっ」

 再び前を向くと、ソウオンは去っていった。

 それを、少女が見つめていた。

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