バンパイアハンター

バンパイアハンター

　暗い路地裏で、二人の男が密かに話し合っていた。

「どうだ、暗殺計画の方は」

「ああばっちりだ。邪魔なあの議員さえ消えてくれれば、俺たちバンパイアの力がますます強まる。そうすればこの街を手中に収めるのも容易いことだろうよ」

　その時、上から声がした。

「ははっ、それはどうかな！」

「なんだ、お前は誰だ！」

「その手に持つ銀の弾丸、貴様まさかバンパイアハンターか！」

　頭上から現れたその男は高笑いしながら言う。

「その通り、俺はバンパイアハンター、お前らのようなバンパイアを狩る者さ！抵抗しても無駄だ、大人しくくたばりやがれ！」

「チッ、あの議員に雇われたのか……」

　絶体絶命。だがその時、物陰から声がした。

「おっとそこまでだ。銃を下ろしてもらおうか」

「なにっ！？その手に持つ金の弾丸、貴様まさかバンパイアハンターハンターか！」

　物陰から現れたその男は静かに言う。

「その通り、俺はバンパイアハンターハンター」

「なんか一気にダサくなったな」

「お前らのようなバンパイアを狩る者を狩る者さ。抵抗しても無駄だ、大人しくくたばりやがれ」

　形勢逆転、このまま逃げ切れそうだ。だがその時、マンホールの中から声がした。

「残念だったな。お前こそ銃を下ろしてもらおうか」

「く、その手に持つ銀の弾丸……お前まさかバンパイアハンターハンターハンターか……」

　マンホールの中から現れた男は野太い声で言う。

「その通り、儂はバンパイアハンターハンターハンターハンター」

「ハンターが一つ多いぞ」

「そうか、儂はバンパイアハンターハンターハンター……だ。お前らのようなバンパイアを狩る者を狩る者を狩る者だ。大人しくくたばるが良い」

　またしても絶体絶命。バンパイアハンターハンターもろとも撃ち抜かれるまさにその直前、近くのゴミ箱の中から声がした。

「待たせたね君たち。さあ、銃を下ろしてくれるかな」

「むう、その手に持つ銀…ああいや金の弾丸。お主はまさかバンパイアハンターハンターハンターハンターか」

　ゴミ箱の中から現れたその青年は澄んだ声で言う。

「その通り、僕はバンパイアハンターハンターハンターハンターハンター」

「ハンターが一つ多いぞ」

「ん？僕はバンパイアハンターハンターハンター……ハンターが三つ、いや四つか？バンパイアハンターハンターハンターハンター……めんどくさいから僕はバンパイアハンター⁴だ！」

「ということは俺がバンパイアハンターで」

「俺はバンパイアハンター²で」

「儂はバンパイアハンター³ということか」

「まあそういうこと。君みたいなバンパイアを狩る者を狩る者を狩る者を狩る者……だな。合ってる？」

「四つだから、合ってるな」

「よし、合ってる。まあとにかく、大人しくくたばったほうがいいよ」

　皆の間に沈黙が流れる。

「……」

「…………」

「………………」

「来ないな」

「ああ、来ないな」

「いや、隠れてるだけかもしれん。ちょっとそこのブルーシートとかめくってみてくれ」

「いや、いないな。本当にこれで出揃ったんじゃないか」

「どうやらそのようだな……。このまま睨み合ってても解決しない。そろそろ始めようか」

「ああ、それが手っ取り早い。負けたとしても恨むなよ」

　今ここに、バンパイア対バンパイアハンター対バンパイアハンターハンター対バンパイアハンターハンターハンター対バンパイアハンターハンターハンターハンターの戦いが始まろうとしていた！　

　そして最初からずっと壁の隙間に紛れて隠れていたバンパイアハンターハンターハンターハンターハンターハンターは、バンパイアハンターハンターハンターハンターハンターが出てこないと登場できないため、悔しさの涙を流していた。