『愛…それは人道的見地から見て』の、遥です。

 町野中央病院、検査室のはるかです。


 今日は、私が専門学校の頃の体験をお話しします。


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 その日は『解剖組織学』の実習で、ラットの解剖を行った。


 各班にガラスケースに入れられたラットと、脱脂綿に麻酔用のエーテルを染み込ませたシャーレが配られた。


 ……当時、私のクラスに、男性はあこがれ、女性はうらやむ、『高瀬さん』と言う美女がいた。


 解剖が始まると同時に、髙瀬さんは、二重ふたえで長いまつ毛の、綺麗な眼を真っ赤にして、ポロポロ泣き出した。


 それを見て、私たちは彼女の優しさと純粋さを知り、涙した。 


 実習のあと、男どもは競って、髙瀬さんに、慰めの言葉や、お菓子、飲み物などを捧げていた。


 



 その、髙瀬さんは飲み忘れていた花粉症の薬を飲んでいた。

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