ひとりごと

@MARONN1387924

第1話



私はきっと間違えてしまった。

けれども、もう、戻れない。

なぜって、彼女がそう選んだから。


私がそう、選んだから。



やあ、久しぶり。うん。

久しぶりついでに話でもしようか。

別に今更な話だけどね。

そうだなー。

じゃあ、少しだけ。



少しだけ、私の独り言に耳を貸してほしい。


あれは中学の頃。

私は理由もなく、周りにいた子達について行くみたいに、よくいる不良少女のようなものになっていた。


小学校までは普通の真面目な女の子だったと思う。


けど、中学に上がって周りがちょっとヤンチャをするようになった頃、私もフラフラと流されていった。


授業を抜けたり、先生に歯向かったり、学校を抜けてコンビニで集まって、無免許でバイクを走らせていた男の子の後ろに乗って、警察に追いかけられて。


それが良かったとは言えないけど、楽しくはあったんだ。


私はそうやってバカなことばっかりで、でも、それが私たちにできる唯一の青春だったんだよ。


マナーも、校則も、時には法律を破って……でもそれが普通の青春が分からない私達にできる精一杯の自己表現だったんだ。


そんな私も中学2年になった頃。

たまたま同じクラスに小学校までは大親友だったって言う女の子がいたんだ。


1年も見ないと随分変わってたよ。


彼女はずっと真面目で物静かな子だった。


私はフラフラ不良の道に流されたのに彼女はホント真面目に頑張って学校に来てさ、けど、私と同じだったのかもしれない。


結衣はさ、イジメられてたの。

物静かで標的にしやすいしね、それに変に真面目で私の不良仲間からヘイト買うような行動取っちゃったり。


私、すっごい悩んだんだよ?

結衣は確かに親友だった。けど今は違う。

私には居場所があって、彼女とはもう、相容れないんだって、だから私、最初はイジメられてた結衣を無視してたの。


けど、日に日に罪悪感ってのは積もってきて、それはどんな法律を破って、どんな刑罰に処されるよりもずっと辛かった。


今後あんなに辛いことは無いってくらいにね。


私は結衣を放課後に呼び出してさ、言ったんだよ。「悔しくないの?」って「辛くないの?」ってそしたら結衣は「なぎちゃんが助けてくれると思ってた」って、私は馬鹿なことしてたなぁって思ったよ。


それからは少しづつだけど結衣と遊んだりして、何とか、あの小学校の頃みたいに仲良くなろうとしたんだ。


結衣はずっと「凪ちゃん大好き」って放課後なんかは私の側でずっといるんだ。


けど、そうは上手くいかないんだ。


他の不良仲間の子から最近付き合いが悪いって言われて、それに結衣をイジメてるのに、お前が結衣と仲良くなるのはおかしいって。


私はどうしたと思う?


そう。流された。

また、フラフラと。


私も結衣のイジメに影で加担した。


けど、学校が終わってそれからは結衣に会って遊んだんだ。


私もイジメに加担してるって言わずに。


学校では結衣をイジメて学校外では結衣と親友みたいになった。


けれど、元の関係にはなれなかった。


結衣は学校では1人、けど私だけが側にいる。

結衣はだんだん私に依存していった。

きっとあれは結衣の初恋なんじゃないかな?


そんな結衣を守ってあげたい、けど、私の居場所も守りたい。


私は心のどこかで結衣は私の居場所ではないと判断したんだろうね。


けど、ずっと結衣に必要とされていくうちに、自分自身も変わってきた。


夏になった頃、私達はもう、普通ではいれなくなったんだ。


酷く歪んだ関係だったけど、私も結衣も幸せだった。


不良仲間も確かに居場所だった。

それはそれで何にも変えられないものだった。

けれど、私は別にそこに必要とされてなかった。


結衣は私を必要としてくれる。

私がいないと結衣はダメになる。

けど、結衣に私は全てを捧げる気にはなれなかった。


私は居場所と必要とされることの両方を満たせた。


結衣は私が全てで、私が居れば幸せだった。


私達は幸せだった。


それからは私は結衣をイジメつつ、結衣と笑って過ごした。


昼は結衣をどうやってイジメるか案を出した。


夜は結衣と手を繋いでキスをした。


私の頭の中はぐちゃぐちゃだったよ。


もう、罪悪感とかないんだ。


私はとても満たされていたんだ。

何も怖くない。無敵の気分だった。


でも、無敵の時間なんてすぐに終わっちゃう。


だって、ゴールまでスター状態のマリオなんて面白くないじゃん。


私と結衣の関係はバレたよ。


それも簡単なことでね。


学校で何時もみたいにイジメの案を出してたらさ、結衣がいきなり私にキスしてきたの。


結衣ってば、上靴も履かないで、私に飛び込んできたんだ。


クラスのみんなもびっくりだよ。


そして私に言うの「もう、凪ちゃんと離れたくない」って、私はとてつもなく満たされたと同時にとてつもなく激しい怒りと不安が頭をぐちゃぐちゃにしたよ。


結衣は私じゃなくて、私といることを優先したんだ。


私を優先してくれるなら、きっと学校であんなことしないよ。


そのおかげで不良仲間からもハブられるようになっちゃった。


だから私は結衣をもっとイジメたよ。

酷いこともいっぱいしたよ。


そうしたらね、不良仲間達みんなが帰って来たんだ。


あれは結衣が勝手に言ったことだって、小学校まで仲良かっただけだって、そしたら誤解が解けたんだ。


私は激しく結衣をイジメたよ。

そしてもっと激しく結衣を愛したよ。


傷つけて、泣かせて、キスもいっぱいしたね。


結衣は先生に何も言わなかったよね。


それに先生も面倒事を避けるみたいに結衣を避けてた。


正真正銘、私と結衣は2人きりだった。


結衣も日に日におかしくなってたよね。


私もおかしくなってた。


大好きだった。



そうやってもう、夏休みになってイジメが落ち着いた時、私は結衣にどっぷりつかっていった。


結衣も私にどっぷりつかっていった。


蝉の鳴く声、ジリジリ暑い部屋、飲みかけのオレンジジュース2つ。


響くのは2人の声だけ。


真夏に布団を被ってさ……。


その後結衣は聞いてきたよね。

「凪ちゃんはずっと結衣の側にいてくれる?って」

私はもちろん「うん」って答えたよね。


そうやって笑いあって、溺れて、溶けて、消えて……。


でも、約束を破ったのは結衣だったよね。


覚えてるよ。


新学期初日。


私はいつものように結衣をどうやってイジメようか、そう考えてた。


じゃあさ、結衣がいきなりさ、教室のあった3階から飛び降りたよね。


教室で見てた私にはもう、蝉の鳴く声すら、聞こえなかったよ。



その後、私が家に帰るとさポストに手紙が入ってたよ。




大好きな凪ちゃんへ


私は凪ちゃんが大好きです。

でも、だからこそ納得いかない部分があります。

どうして凪ちゃんはあんな奴らと絡むの?

私がいれば、私だけじゃいけない?

私が思うにアイツらは凪ちゃんを苦しめているような気がします。


そんなヤツらを懲らしめたい。

凪ちゃんのためになりたい。


でも、私には凪ちゃんしかいません。

凪ちゃんに頼らずにアイツらを懲らしめる方法を見つけたのでやってみようかと思います。


それでは最後に、凪ちゃん大大大好きです。


じゃあ、またね。



その後遺書が発見され、それにはイジメの内容などが書かれていました。それにより不良仲間達はみんな世間から相当な制裁を受けました。


けれども、私に関しての内容は一切書いていませんでした。


不良仲間達は私を本当のイジメの主犯格だと言いました。


それでも私は結衣と小学校から仲が良かったことと、不良の中でもまだ考えて行動出来るやつだったと、そして、何より遺書に書かれていなかったので、私が咎められることはありませんでした。


結衣は全てを私に捧げてくれました。




結衣。


私はどこで間違っていたんだろう。

結衣、会いたいよ。

結衣。


あれ、涙が。





「どうなされましたか?大丈夫ですか?」

「ええ、すいません。少し涙が」

「そうですか……。にいじま結衣さんですか。きっと彼女は幸せものですよ。こうして墓の前で泣いてくれるご友人を持って」









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