両親に押し切られて始まる俺と幼馴染との共同生活
枝波慶康
第1話 突然告げられる共同生活
「
「えっ?」
それは毎日の習慣である家族との夕飯を済ませた後のこと。俺は父親から放たれたその言葉に耳を疑った。
「父さんごめん、なんて言った?」
「
えっと…、うん、どうやら俺の聞き間違えでも俺の耳がおかしくなってしまった訳でもなく、本当にそう言ったんだな。
久々に聞いたその名前に俺は少し驚いた。
「何で突然そんなことを言い出したんだ?何か事情でもあるの?」
「俺と向こうの親父さんが近々海外へ出張することが決まってな。母さんも一緒に付いてきてくれることになってな」
「海外出張!?そんないきなりな…。ていうか母さんも付いていくのか…」
あまりの突然のこと過ぎて頭が追いつかない…。しかも
「俺と
「いや、それが向こうの両親がな? 年頃の娘を二人だけで生活させるのは色々と心配だって言っててな」
なるほどな、確かに防犯面などで心配なのだろう。何となく言わんとしていることは分かる。だが、それを理解するのと納得するのとは全く別の話だ。
「その言い分も確かに分かるけど、よりによって何で俺と共同生活ってことになるの?もっと色々他に方法はあるでしょ。 祖父母の家にお願いするとかあるじゃん」
「向こうの祖父母は三年前に亡くなってるんだ。だから頼れるところが他にないんだよ」
うーん…。そうは言ってもなー…。やっぱり同居するのはなー…。
そう思っていると、なんと父さんは頭を下げてきた。その行動に驚いていると、固い意思で頼んできた。
「頼む
色々腑に落ちない点もあるが、父さんがここまで言う上に、向こう側がそう言ってくれているのならば、断わるのはかなり気が引ける。なので、渋々俺は承諾した。
「分かった分かった、顔をあげてよ。向こうに大丈夫だって返事しておいてくれ」
「本当か!ありがとう
「そうは言っても何処に住めばいいんだ? この家?それともあっちの家?」
「向こうがしばらく使用していない一軒家があるから、そこを使ってくれだとよ」
「ああ、あの家か。あの家は確か
「俺たちの出張が来週の月曜日だ。その日、大学の帰りにそのままあの家に向かってくれ。荷物なんかは運んでおくから」
「分かった」
来週の月曜日か。
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週明けの月曜日。
いよいよ今日から共同生活が始まる。授業が終わって大学を後にし、電車に揺られている間、ずっとそのことばかり考えていた。
そわそわした気分そのままにあの家へと歩を進める。一歩一歩不思議な感覚だった。
程なくして家の玄関前に辿り着いた。リビングのカーテンから光が漏れているので、既に中にどちらかは居るのだろう。
予め受け取っていた合鍵で鍵を開ける。一呼吸置いて、俺は玄関の扉に手をかけ、静かに開ける。ここから始まるこの共同生活に一抹の不安を抱きながら…。
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