―95― 中ボス

 今日も今日とて、コンプレジョダンジョンにてレベル上げに勤しんでいた。

 直近の目標は15層にいる中ボスを倒すこと。

 初回クリア報酬はないらしいが、経験値ボーナスがあるとのことで行かない手はない。

 だけど、中ボスに挑むには今のレベルでは少々心細い。

 具体的には僕のレベルが60に到達したら、中ボスに挑むつもりだ。

 そして、中ボスを倒したら開かずの扉を探そう。実際に壁抜けを使って入るかどうかは後で考えるとして。

 それともう1つ、氷の魔法の特訓もしなくては。

 それに、氷の魔法は中ボスを倒すにあたって非常に有効打になる可能性がある。覚えておいたほうがいいだろう。

 こうして考えると、レイドモンスターを戦うまでに、やるべきことが盛りだくさんだ。

 そんな具合で、僕はコンプレジョダンジョンでひたすら特訓をしていた。


 そして、特訓を初めて一週間後――。


「〈氷の槍フィエロ・ランザ〉」


 右手を前にして唱えると、細長い氷の槍が生成される。それを目の前にいる火を吐く猟犬フエゴ・ハウンドへと射出する。

 火を吐く猟犬フエゴ・ハウンドは避けようとするも直撃した。

 そう、見ての通り僕は一週間で氷の魔法を会得したのだ。


「ガウッ!」


 氷の槍フィエロ・ランザは僅かにダメージを与えるだけで、火を吐く猟犬フエゴ・ハウンドは火を噴きながら、僕に襲いかかってくる。

 氷の魔法を習得し〈氷の槍フィエロ・ランザ〉をなんとか放つことはできるようになったはいいが、モンスターを一撃で倒すには至らないらしい。

 まぁ、このダンジョンのモンスターは基本強いのばかりだから、一撃で倒そうと思うのは贅沢な気もするけど。


「〈必絶ひつぜつつるぎ〉」


 と、モンスターを確実に倒すべくスキルを使用する。


 ◇◇◇◇◇◇


 レベルが上がりました。


 ◇◇◇◇◇◇


「おっ」


 と、僕は声をあげる。

 これで目標だったレベル60になれたんだ。

 まだ夜になるまで余裕があるし、今日のうちに中ボスに挑むのもいいかもしれない。


 それから、僕は15層へと下っていく。

 すると、そこには巨大な扉があった。

 他のダンジョンでいう、ボスエリアに入るための扉と似ている。

 この扉を開ければ、中ボスへと挑めるはずだ。


 僕は少しだけ緊張する。

 この部屋に入れば、モンスターを倒すまで外には出ることができない。

 僕なら、ボスを倒せなくても壁を抜けることで部屋の外に出ることができるが、そのためにはボスに壁まで投げ飛ばされる必要があるわけなのだが、これから戦う中ボスにはそれは期待できそうにないのだ。

 だから、僕はいつもより気合を入れて中ボスへと続く部屋に入った。


「グギャァアアアアアアアアアアアアアアア!!」


 部屋に入った瞬間、モンスターの咆哮で反射的に耳を塞ぐ。


 ◇◇◇◇◇◇


飛竜ワイバーン

 討伐推奨レベル:95

 コウモリのような翼を持った竜。空を飛びながら、火を吐いて襲いかかる。


 ◇◇◇◇◇◇


 見るからに凶暴なモンスターが空中に翼を広げながら舞っていた。

 しかも討伐推奨レベルが95と、いまだかつて見たことがないレベル。

 本当に勝てるのか? と冷や汗をかく。

 とはいえ、倒すための準備はしてきたつもりだ。

 それをぶつけることができれば、勝つのはそう難しくないはず。


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