―34― パーティーとの遭遇
このトランパダンジョンにおいて、厄介とされているのはなにもモンスターだけではない。
「あっ」
僕は思わず、そう口にする。
転移トラップを踏んでしまったのだ。
そう、トランパダンジョンではこの転移トラップがあちこちに張り巡らされており、やってきた冒険者たちの邪魔をする。
場所も日によって変わるらしく、対策が難しい。
「自分がどこにいるのかわからなくなるから、ホント面倒なんだよなぁ」
飛ばされた先で、僕はそう呻く。
ダンジョンは似たような壁がずっと続くため、自分の位置を中々把握しづらい。
すぐに居場所がわかればいいんだけど……。
そんなことを思いながら、僕は地図を開きながら、周囲と照らし合わせる。
うーん、この感じ入口の近くに飛ばされたぽいな……。
飛ばされる場所はランダムなため、時にはボスエリアの近くに飛ばされることもあるが、残念ながら今回はそう都合よくはいかなかった。
「あら?」
ふと、誰かの声が聞こえた。
「あなた、確かギルドで会った冒険者よね?」
見上げると、銀髪の髪を持った女の子が立っていた。
どこかで会った気がする。
そうだ、冒険者ギルドで僕が中級者向けのダンジョンの情報を見ているとき、初心者向けの方を見るよう誘導した女の子だ。
「あ、あのときはどうも……っ」
女の子と話す機会があまりないので、思わず緊張してしまい声がうわずってしまう。
ダンジョン内で他の冒険者と遭遇することは珍しいことではない。一応、挨拶はすませたのでその場を離れようとして――
「ちょっと待ちなさい!」
なぜか銀髪の女の子が僕を呼び止める。
「なんでレベル1のあなたがこんなダンジョンにいるの?」
銀髪の女の子はぐいっ、と僕に顔を近づけてくる。
そういえば、ギルドで銀髪の少女に自分のレベルを話したんだっけ。今はレベル5だけど、あのときはまだレベル1だったはずだ。
「え、えっと……」
顔が近すぎるような気が……。おかげで、余計緊張してしまう。
「たまたま迷いこんでしまったというか……」
正直に言うわけにもいかないので、テキトーな言い訳を考える。
「はぁっ、ありえないんだけど! 自分のレベルに見合ったダンジョンに行けって、冒険者の基本でしょ! あなた死にたいの!?」
「ご、ごめんなさいっ!」
反射的に頭を下げてしまう。
女の子に怒られることなんて滅多にないせいだろうか、なんか涙がでてきた。
「もう仕方がないわねっ」
銀髪の少女は前髪をかきむしるような態度をしながら、こう提案してきた。
「あなた、私たちの後ろからついてきなさいっ」
どうやら、僕のことを守ってくれるということだろうか。僕を一人でここから引き返させるより、同行させたほうが一見僕の生存率はあがる。
「あ、ありがとうございます……」
本音は「一人でさっさとダンジョンをクリアしたい」だけど、そんなこと言えるはずもなく、僕は頭を下げる。
「おいっ、なんでガキのおもりをしなきゃなんねぇんだよ!」
銀髪の少女の後ろで待機していた男たちの一人がそう声を荒げた。
「わたしがあなた方を雇っていること忘れたのっ? わたしの決定に逆らわないで」
自分より年上の男のはずなのに、少女は臆せずそう反論する。
「だが、ガキの護衛なんて依頼料に含まれてねぇだろ」
「別に、護衛しろなんてお願いしてないわ。彼はただ後ろからついてくるだけで、彼を連れてダンジョンを引き返すわけでもないのよ。それとも、そんなことさえ許せないぐらい冒険者って心が狭いのかしら」
「ちっ」
男の方も不満げではあるが、一応納得はしたようで引き下がった。
どうやら僕はパーティーについていくことになるらしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます