―33― ゴブリンの群れ

 翌日、僕はトランパダンジョンに来ていた。

 目的は初回クリア報酬の〈習得の書〉を手に入れて、物理攻撃クリティカル率上昇・特大〉をさらに上にあげるためだ。


「「グギャァアアアアア!!」」


 中を進んでいると子鬼ゴブリンの群れと遭遇する。

 いつもどおり倒さないで奥に進もうと、右足に力を入れようとして、ふと思う。


「今の僕なら倒せるんじゃないか?」


 子鬼ゴブリンそのものはコボルトより、少し強い程度の魔物。

 群れで攻撃してくる点は厄介だが、クリティカル率が100%の今なら、一撃で倒すことができるはず。


「試しにやってみてもいいかも……」


 ナイフ片手にそう意気込む。

 そして、僕は子鬼ゴブリンの群れに単身で突っ込んだ。


 まず、手前にいた子鬼ゴブリンたちが片手剣を持って僕に挑もうと駆け寄る。


「遅い――」


 一瞬のうちに手前にいた3体の子鬼ゴブリンを斬り刻む。目論見通り、ちゃんと一撃で倒せるな。


「あぶなっ」


 僕は盾を前にしていた。

 すると、カツン、と盾が矢を弾く。

 弓矢を持った子鬼ゴブリンもいるのか。

 矢を放った正体は遠く離れたところで、僕に矢の照準を合わせている。

 やっかいだな……。

 矢を気にしながら、近くの子鬼ゴブリンと戦うのは、流石に骨が折れそう。

 ならば、あっちから先に片付ける――。

 地面を蹴り、一瞬で弓矢を持った子鬼ゴブリンに近づく。


「グギョッ!?」


 突然、迫ってきた僕に子鬼ゴブリンは驚きを声をあげる。

 それでも子鬼ゴブリンは弓矢の照準をしっかり僕にあわせたままだった。

 ヒュンッ、と矢が放たれる。

 そして、子鬼ゴブリンはニタリと口角をあげた。

 この距離で放った矢は避けられない、とでも思っているのだろう。


「〈回避〉」


 刹那、僕の体が横にブレる。

 気がついたときには、矢は僕の横をかすめていた。


「よしっ」


 僕はそう口にしながらナイフを横に薙ぐ。すると、弓矢を持った子鬼ゴブリンは血を噴きながら倒れる。

 他にやっかいなのはいないのかな?

 僕はぐるりと周囲を見渡す。


「「ギョェエエエエエエッッッ!!」」


 見ると、僕に恐れをなした子鬼ゴブリンたちが背を向けて逃げていた。

 追いかけて殺してもいいんだけど……。

 そんなふうに考えてから、まぁいいか、と。ナイフを腰にしまう。

 子鬼ゴブリンを狩っても大したお金にならないし。


 ◇◇◇◇◇◇


 レベルが上がりました。


 ◇◇◇◇◇◇


「あっ」


 唐突に現れたダイアログを見て、僕は声をあげた。

 今の子鬼ゴブリンを倒したことで、レベルが5にあがったらしい。


「レベル5になれたんだ……!」


 こんな短期間でレベル5になれるなんて! 意外と僕ってすごいのかもしれない。

 それから僕は倒した子鬼ゴブリンの解体をし、中から魔石を取り出す。子鬼ゴブリンは魔石以外は価値がないので、それ以外は捨て置くことにした。



「グゴォオオオオオオオオオオオオ!」


 レベルもあがり機嫌がよかった僕は意気揚々と歩いていたら、岩の巨兵ゴーレムと接敵した。

 レベルも5になったことだし、今の僕なら岩の巨兵ゴーレムでも倒せるんじゃないだろうか?

 ってことで試してみる。


「うりゃぁああああああ!!」


 ナイフを片手にモンスターに飛び込む。

 カツンッ、と岩の巨兵ゴーレムの体に弾き飛ばされた。


「まだダメでした!! あと、ごめんなさぁああああい!!」


 襲ってくる岩の巨兵ゴーレムに対し、僕は転げ回るように逃げていた。

 クリティカルはちゃんと発動した。それでも素の攻撃力が低いせいで、岩の巨兵ゴーレムを倒すには至らないらしい。


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