―11― 新しいダンジョンの開拓
「ファッシルダンジョンで〈旅立ちの剣〉を入手するのはもうやめにしよう」
翌日、僕はそう決意していた。
いくら換金所を毎回変えたとしても、初回クリア報酬を何度も換金していたら怪しまれる。
その結果、〈回避〉で壁を抜けていることがバレてしまえば大変だ。ギジェルモのような悪党にコキ使われる可能性が高い。
昨日のギジェルモの口ぶりから判断するに、僕が換金所に頻繁に行っていることがバレていたようだが、〈旅立ちの剣〉を何度も換金していることまではバレていなかった。
おかげで、〈旅立ちの剣〉を奪われるだけで済んだのは不幸中の幸いか。
「とはいえ、ファッシルダンジョン以外に僕が安全に攻略できるダンジョンってないんだよね……」
ファッシルダンジョンは初心者用のダンジョンだ。だから、ボスの部屋まで辿り着けたが他のダンジョンだとそうはいかない。
「それにいい加減、モンスターを倒せるぐらいには強くならなきゃ」
そうでないと、一生ギジェルモに物を奪われて終わりだ。
だが、肝心の方法は思いつかない。
「家で考えても仕方がないか……。試しにギルドにでも向かってみよう」
冒険者ギルドには冒険者にとって有用な情報が多い。
情報を手に入れれば、僕が強くなるヒントもあるかもしれない。
◆
冒険者ギルドではダンジョンの情報やモンスターの生息域など、冒険者にとって必須な情報がたくさんある。
だけど、僕はギルドにあまり行かない。
というのも、僕は変な意味で有名人だ。
ゴミのようなステータスにゴミのようなスキル。『永遠のレベル1』なんてあだ名もあるぐらい。
だから、冒険者がたくさんいる場所に行くと、みんなが僕のことを馬鹿にするような視線を向けているんじゃないかとソワソワしてしまう。
ギルドでもアイテムの換金はやっているのだが、そんな理由もあって僕は使わない。
とはいえ、気にしたって仕方ないし、強い精神を保ってギルドに貼られた情報を見て回る。
「薬草や鉱石の採取だったら、モンスターを倒せない僕でもできるかも」
そのためには採取できる場所まで馬車で向かう必要がある。ちょっと前までの僕なら、馬車に乗るお金すらなかったが今ならなんとか捻出できる。
けど、採取してもレベルがあがるわけではないしな。
お金を稼ぐためならいいかもしれないが、今の僕に必要なのは強くなることだ。
「これにしよう」
僕は一つのダンジョン情報が書かれている紙面を見てそう呟く。このダンジョンなら、僕が強くなれるかもしれない。
それから僕はダンジョン攻略に向け、必要なものを揃えた。
まず、これから向かうダンジョンの地図。ダンジョン攻略の際、地図を購入するのは冒険者にとって基本中の基本だ。
次に向かったのは防具屋。
今まではナイフを購入していたが、今回は全く違うもの。
「これ、いくらですか?」
「8万イェールだよ、坊主」
防具屋のおっさんがぶっきらぼうの調子でそう口にする。
恐らく初心者にしか見えない僕の姿を見て、冷やかしに来たんだと思っているに違いない。
とはいえ、僕には〈旅立ちの剣〉を売って貯めたお金がある。
8万イェールは痛い出費だが、これは僕にとって必要な物だ。出し惜しみはできない。
「坊主、金がねぇなら邪魔だからどっか行ってくれ」
「おじさん、これください」
「あん?」
「お金なら、これで足りますよね……」
僕は8万イェール分の硬貨が入った小袋をおじさんに手渡す。
「こ、これは失礼しましたっ!」
まさか僕がお金持っているとは思わなかっのか、おじさんは慌てて頭を下げてくる。
「では、こちら〈
〈
剣は〈剣技〉を持っていないと効果を発揮しないが、盾は特別なスキルを持っていなくても、その盾で攻撃を受け止める限り効果を発揮する。
「うん、軽いしこれなら移動の妨げにならなさそう」
腕に装着して感触を確かめながら、そう言う。
この比較的小さな盾は、本来片手剣を扱う冒険者がもう片方の手に装備するための盾だ。剣を振り回しても邪魔にならないように盾の大きさが小さくなっている。
今回僕は、
それより、壁を抜けるために必要な敵に攻撃されるという手順を確実に行うために盾を装備することにした。
小さな盾を選んだ理由は、僕の唯一の特徴である敏捷を下げないためだ。大きな盾を持ってしまうと、どうしても走るスピードが遅くなってしまう。それだと、モンスターと一切交戦しないでダンジョンを進むのは難しいと考えてのことだった。
それから薬屋で、MP回復薬をできる限り買う。
ファッシルダンジョンと違い、〈回避〉を頻繁に使う機会も多いだろうし、MP切れも予想される。持っておいて損はないだろう。
「よし、準備ができた」
僕は装備した〈
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