第一章 1《出会い》

初めて他クラスに足を踏み入れたのもあの子に会うためだった。SNS上で話が盛り上がった私達は次第に顔を合わせて話をしてみたいと思うようになっていた。


いや思い返せば私だけがそう思っていたのかもしれない。やっと私に価値観の合う人間が現れたと、心の中では子供らしく舞い上がっていたんだろう。




ドアを開けてあの子を探した。窓際から2列目、後ろから3番目、スマホをいじっているその子がいた。音楽を聴いていた。こちらを振り向かないかと期待して、時折スマホをいじる手を止めてイヤフォンをダブルタップする仕草だけでそわそわした。


どれくらいの時間待っていただろう。いつまでもこちらに気づかないその子に対し次第に機嫌を悪くした私はその場でダイレクトメールを送った。


「ねぇ振り向いてみて」


目があった。急いで手を振ると、その子は片耳だけイヤフォンを取ってこちらに近づいてくれた。


「初めて話すの緊張するね、なに聴いてたの?もしかして昨日話してたバンドのやつ?」


「そうだよ。すごく良いねこの曲。」


緊張しているのかゆっくりと言葉を選ぶように紡いでいくその子は、大人しそうな、想像通りの人だった。外見は気にしてはいそうだが、後ろの髪だけはねていたり肌荒れも少し見られたり、けれども目はぱっちりとして愛らしい顔をしていた。2軍くらいだなと感じた。

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