恋心を聞かせて2 リュウタ視点

「フラれたか?」


 席を立ったミサトを見送って、俺は向かいに座るトモキに声をかけた。


「はい、あっさりと」


「そうか」


「彼氏いないって言ってたけど、欲しいとも言ってなかったんで、告白するつもりもなかったんです」


 トモキの話すことはすこし理解できる。メグミが恋愛に全く興味がないのは話していてわかる。俺の場合は若さゆえの傲慢さや万能感から俺が振り向かせてやるなんて考えて結局玉砕したが。


 でも、とトモキは続ける。


「なんか、話してたら、伝えたくなっちゃったんですよね。同期の子にのせられてたのもあったのかもしれないですけど」


 俺の気持ちを知ってほしくなってしまった。しぼり出すような声には明確な後悔がにじむ。


「困った顔してた」


 どんな感情だって、伝えてしまうと今までの関係とはすこし変わったものになる。恋愛感情の告白がその最たる例だ。互いにおなじ感情を持っていたとしても、そうでなくても、今までの関係には戻れない。


 だいたいの場合は。


「メグミは何て言ってたんだ?」


「それは……」


「私は恋愛はできないから。友達のままでいてほしい、じゃない?」


 ミサトが戻ってきた。どこから話を聞いていたのかと思うほど的確に話に混ざって来る。


 驚いた顔のトモキが頷く。


「はやかったな」


「ごめんなさいね、もう少し二人で話したかった?」


 化粧室から帰ってきた女性にかける言葉ではないだろうが、俺とトモキで話す時間を取るという目的で席を立ったにしては早いのでおもわず口に出てしまった。ミサトも気にする様子はなく話を続けている。


「トモキくんは、メグミに告白したのね。何かあったとは思ったけれど、そういうことだったの」


 そんなときに声をかけてしまってごめんなさいと神妙な顔で謝罪をするミサトは全部わかっていて行動しているのにあいかわらず自然な演技だ。役者かそれでなくても詐欺師向きだと思う。 


「いや、そんなことは。共通の知り合いが多い分話しにくいですし、聞いてもらえるのはありがたいです」


 俺らも共通の知り合いどちらかというとメグミよりだが、とは思うがトモキの気遣いはありがたく受け取っておくことにして、もうすこしトモキの話を聞かないとミサトのネタにならない。


 そう思いながら、トモキを見る。まぁもう大丈夫だろう。


「よーし! じゃあ今日はたくさん食べて飲んで話して忘れよう! リュウタの時も公園のベンチでコーラ片手にずっと話聞いたのよ。もちろん、メグミには言わない」


 小説のネタにはするけどな。ミサトの言葉に心の中でつぶやくと、ばれたのかミサトに軽くひじでこづかれた。


「ほら、酒もたのもう。料理は何がいい? 好きなの選ぶといい。あ、俺はこれ」


 俺が先に飲み物と料理を選ぶと、トモキも遠慮しがらも酒と料理を選び、注文した。


 トモキも話したいことが出てきたのか、いろいろと話しはじめて、ミサトもそれに頷きながら聞いている。


 俺は今日の終電の時間を気にしながら、最初に頼んだフライドポテトの最後の一本をつまんだ。

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