電脳ボトルメール
@swS
1 青年の文章
『吞みながら書いているから変な所あったら勘弁な。イタいのは標準装備。
はいじゃあ大学時代の友人との罰ゲームで昔の武勇伝書きまーす。
まず、俺人間じゃないんだわ。人間の姿が基本なんだけど、半魚人みたいな姿もあんの。どっちが本当の姿って訳じゃなくてどっちも本当の姿。
あ、馬鹿げていると思った?そうそう作り話よ、これ。武勇伝なんかある訳ないじゃん。冒頭にこの話は実在のほにゃららとは関係ありませーんってテロップ出る奴さ。
とりあえず続けると半魚人みたいな姿(面倒だから以下、半魚人姿)は別に人間の姿と変わりない。ただ不気味なだけ。
特殊能力的なのは1つあって、その群れのリーダーはその群れ全体の変身をコントロールできるのよ。子供がうっかり半魚人姿にならないのはリーダーのおかげって訳。
ここまでが前振り。前置きだっけ?まあいいや。
で、ここからが本題。
俺が高校生の時、姉ちゃんは大学生だった。仲は普通。昔はいつも一緒にいたけど、姉ちゃんが大学に入ってから少し変わって距離ができた感じだった。
確かあれは10月か11月の朝。姉ちゃんが突然結婚するって爆弾発言した。相手は40超えているオッサン。卒業したら家出ていくって一方的に言って姉ちゃんは出て行った。
俺は急だなーくらいにしか思わなかったけど、母ちゃんはブチギレた。その日の夜母ちゃんから話聞いた父ちゃんは母ちゃんに輪をかけてブチギレた。それが分かっていたのか、姉ちゃんは俺からの連絡しか受け付けなかった。
この時の俺は両親寄りだった。なんであの時姉ちゃんに話せば分かるなんて必死に縋りついたんだろうと今は思うけど、多分友達もいなかった俺は家族っていう自分の世界を壊したくなかったんだと思う。
結局姉ちゃんが俺に折れて家で話し合いすることになった。参加者は家族と結婚予定相手のオッサンの計5人。
話し合いって言っても最初はよくある結婚報告みたいな感じで、俺は両親の隣でただ話を聞いていた。
20歳そこそこの姉ちゃんと結婚するんだからイケオジとかそういうタイプだと思っていたらオッサンは神経質そうなチョビ髭親父だった。しかも名前が今で言うキラキラネームみたいな凄い名前でインパクトあった。だけと話し始めるとそういう印象を覆して変な人としてしか認識できなくなった。え?気にするのそこ?みたいな箇所が短い話の中でいくつもあった。
それでも悪い人じゃないと俺は思った。けど両親は駄目だった。オッサンが駄目だったというより誰でも駄目だったんだと思う。
頑なな両親に姉ちゃんの心が冷えていくのが分かっても俺は何もできずオロオロしていた。
姉ちゃんがもう帰るって言った時、俺は声が出なかった。父ちゃんが姉ちゃんの腕掴んだ時も俺は声が出なかった。
肌で分かった。父ちゃんが姉ちゃんを半魚人姿にしようとしているって。
やめてって嫌がる姉ちゃんの半魚人姿が見えて、俺は自分の体温が急激に下がったのを感じた。
やめろ!と叫んだか、それだけはするな!と叫んだか覚えていない。
俺は喚いて、泣いて、姉ちゃんとオッサンを外に連れ出した。
もう戻ってこなくていい。本当にごめん。そう姉ちゃんになんとか伝えると逆にごめんと謝られて俺はまた泣いた。
二人を見送ってから家に戻ると父ちゃんが蒼白な顔で謝ってきて、母ちゃんは父ちゃんを支えながら謝ってきた。俺はもう泣き崩れることしかできなかった。
それから姉ちゃんには連絡を取っていない。
たまに夢を見る。俺が上手く父ちゃんも母ちゃんも姉ちゃんもとりなして、オッサン含めた5人で団欒している夢。
きっとまだ俺はその夢を夢見ている。だから姉ちゃんには連絡できない。俺の夢は姉ちゃんを傷つけて、誰の幸せにもならない。
書き終えてから思ったけど、これ情けない話でしかないな』
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