欲しがりの次元








 国同士が顔を合わせる場で略奪戦の結果発表が運営クランを混ぜて行われた。


 ヒカリは後ろにチラッと視線を流すがいつも居るはずのミリアは居ない。


 ルールブレイカーにミリアを取られた事を寂しく思いながら勝ち星を上げた国にヒカリは略奪戦の報酬として情報を貰っていく。


 今回ミースティアの戦果は勝利数七で敗北が三。


 国同士のランクでは最下位に属しているミースティアでは半分以上の国に勝てていて上々の戦果だと言えた。


 ヒカリは負けた国に対してレアスキルや有益な情報を報酬として求めた。


 だがこの略奪戦で二つの敗北しかしてないラクリガルドには違った物を要求する。


「ミースティアに対してラクリガルドは未開の地の攻略情報を教えて貰えるか?」


 他の国々も欲しかったであろう情報を独占出来るとなれば国同士の会議ももう少し融通が聞いてくるだろうとヒカリは思っていた。


 普段チャラついた雰囲気を纏わせているラクリガルドのマスターはその情報の重さを理解していないのか。


「未開の地? それはなんのこと?」


 と白々しく惚けてくる。


 略奪戦を自ら開いて満足な報酬すらも用意する気がない姿勢にヒカリは呆れるしかない。


「ミースティアへのラクリガルドからの報酬は却下されます」


 この場を取り仕切っていた運営クランの男が口を挟む。


「それは何故?」


「ラクリガルドの情報にアクセスしましたが未開の地の攻略情報は無いので却下されます」


 運営クランからの物言いに他の国々からも驚く声が漏れた。


 じゃあ何故スタンピードがあの国にだけ起きてないのか? という疑問はあったが運営クランへの信頼から嘘は言わないと知っている。


 それが知れただけでも少しはマシだと言い聞かせながらラクリガルドには他の国と同様なレアスキルの情報を開示するよう提示した。


 ヒカリが一段落付けば他の国からも要求はされる。


 二つの国はヒカリと同様にミースティアに対してレアスキルかそれにまさる有益な情報の提示。


 そして国のランクでは一位のラクリガルドに続いて二位の【アフィリンス】は他の国に一つのお願い事を要求する。


 アフィリンスはこの略奪戦の結果は全勝。


 一人の女のマスターが口を開いた。


「私共に負けた国々はスタンピードロストが起こるような事があったとした場合にそれが他国の仕業だとしても一度だけアフィリンスは責任を負わなくていいというお願いです」


 あからさまな挑発行為。


 何かするけどバレた時は見逃せと【最上位クラン アフィリンス】のマスターネリアはお願いする。


 ネリアのお願いは受け入れるしかなくヒカリはそれを黙認した。



 情報交換の場も終わり会議場からミースティアのホームに切り替わる。


 結構な時間あの場で過ごしたなと張り詰めた空気が嘘のように無くなり一息つく。


「ご苦労さまです」


 声のした方向に目をやればミリアが笑顔で迎えてくれる。


「楽しかった?」


「勿論ですよ!」


「ミリアは二人っきりの時は素直だな」


 少し照れたように下を向くミリア。


 スっと顔を上げるとニヤニヤとする笑みを貼り付けた。


「団長は未開の地の情報欲しいですか?」


 未開の地の情報。国同士の情報交換ですら手に入らなかった代物だ。


「知っているのか?」


「さっきデートしてた最中にシン君に教えて貰ってきました」


「ルールブレイカー本当に何者なんだ」


 気兼ねなくデートの最中に漏らしていい情報ではないはずなのだがと思うが素直にミリアに尋ねた。


「教えてくれ」


「良いですよ」



 今まで知りえなかった未開の地の情報にヒカリはワクワクしていたのも事実で国の為と言ってもプレイヤーとして未開の地の情報は興味深かった。



「言葉を喋る魔物の存在と樹海、海底、天空、洞窟。それぞれに未開の地に行く門が現れるのか」


「シン君はフィールドマップの境があり門が設置してあると言ってましたね」


「喋る魔物の存在は?」


「ジョーカーと言う最初の魔物には高度なAIがあるらしくコーヒー牛乳飲ませて味が分かるやつに仕上げたとシン君は言ってました」


「そ、そうか」


 魔物に味を分からせたという件は意味が分からないがヒカリはルールブレイカーの存在自体が次元を超えていた。





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