響さんは大人の男
ちょっと添い寝になれたのか、いや、私がおかしくなったのか、目が覚めたら、森田さんの首あたりに鼻をつけ左腕左足は完全に森田さんの体にまとわりつきロックしていた。
ふと森田さんをみると、目が開いてる。
この状況で、ずっと待機?してたの?!
まだ薄暗い。睡眠の邪魔になっちゃだめだな......。
私は寝てるふりかまして、反対側に寝返りをうつ。ほっ、もう少し寝よ。
あ?!
ふわっと軽く、森田さんはこっちに寝返りを打った。
私に後ろからくっついてその右腕は私の胸の上に。べつに触りに来た訳じゃない。たまたま。
でも、私は知っている。
今から約2分前、彼は目を開けていた。
ふふん!さては起きているな?
え、まさか、目開けて寝るスキル習得済み?
と、まだ明け方なのに森田さんのスマホがブンブンいってる。
飛び起きた森田さんはすぐに部屋から出ていった。
バイブ振動だけで起きるのか。
私は眠ってはいないが、詮索は禁止行為。
聞く気はなくとも話声が漏れてきたら耳はそちらに集中するのが人間。
「了解。じゃ僕があたりを歩いてみます。何か感じたらすぐに....はい。」
あたりを歩く?
感じたら
すぐに?
やっぱり不明。
私は森田さんがでかけた音を聞いて、眠れずリビングへ。
そこには置き手紙があった。
―――まことさんへ
今日は早くに出勤でした。
帰りは少し遅いかもしれません。
森田
今どきわざわざ置き手紙.....字がキレイで驚いた。
会社で営業がではからい、吉田さんはまだ昼休み中。響さんと私だけで仕事中。
「まこちゃん、ちょっと来て」
「はい」
「ここのスタイルシート調整して、ワイズが広すぎるのとフォントも12pxじゃちょっとでかすぎだな」
「はい、すぐ直します」
「あ、それから。今日晩飯行こう」
「え、みんなでですか?」
「いや、二人で。」
どうしよう。響さんと二人で食事?
まぁ直属の上司だし、断る理由もないけど、行く理由も......。
「なに?嫌か?」
「いえ、とんでもない」
「よし、何食べたいか考えといて!」
この職場で私、部長とか他の人も二人で、食事なんて行ったことないな、ランチ以外。
森田さんに連絡入れとくか、いやいちいち変?でも、もし早く帰ってきたら晩御飯ないし。
遅くなります、晩御飯は上司と食べてきます
いや、変だな。細かすぎっ
私も少し遅くなります。食事は外でします
ぎゃーっ。なんて打てば良い?
少し遅くなります。外で食事します。
少し遅くなります。晩御飯用意できずすいません。
んー.........。
+++
「ねぇ、まこちゃん、なんでうどん屋チョイス」
私はうどん屋をリクエストしたのだった。
北新地の大きな器に入って出てくるうどん屋さん。
「はは。うどん屋さんにしてはオシャレじゃないですか?」
「まぁな。うどん屋で酒飲む気にはならないけど。イケるタイプだよな、酒飲みだって聞いたけど」
だれだっ、そんな話.....吉田さん?か
「まぁ、家では飲みます。少し」
「今日は?このあとその辺で飲むぞ。」
「あ、はい」
やっぱりそうですよね。酒飲みで通ってしまった私。
高級クラブやスナックやキャバクラやら入り乱れた中にポツンとあるバーに入った。
「いらっしゃい」
店員はおっちゃんひとり。八百屋かと思うハチマキしたおっちゃんがひとり。なんで?
「やっぱり大阪は賑やかでいいな」
「そうですね」
「なぁ、まこちゃんさ」
え、なにこれ。真横に座る響さんがいつもとは違う目つきで私を見る。
たしかに、カッコいいっすよ。そりゃ、本人も自身がお有りのようで。
なかなかワイルドで大人の魅力たっぷり詰め込みましたみたいな。
笑うとちょっと優しげだけど、普段はキリッとした塩顔?そりゃイケメン上司の代名詞みたいな方ですよ。しぐさも話し方も。
どっかの、どもる白い美青年とは真逆。
「はい」
「ほんとに彼氏とかいないの?いそうなんだよな。雰囲気」
いそう?私が彼氏持ちにみえる?
「まぁそりゃ、全く何も無いわけじゃないですよ」
ちょっと見え張ったかも。いや事実?でもないかな。
「そりゃ、こんなお嬢やで、誰かおるにきまってるわ〜。兄さん早いとこ、キメとかな!すぐにもっていかれてまうでー。おたくら、上司部下?」
出ました。八百屋チックなおっちゃんマスター。
まるで人をイキのいい魚だか野菜みたいに。
「はい、一応上司なんですよ」
「はあ〜ええなあ、若いってのは。昔な僕もいっときは......」
「お会計お願いします」
響さんはおっちゃんマスターの思い出話をカットしてしまった。
店を出て駅へ向かう途中
「大丈夫か?酔はしてないな?」と私の頭をぽんぽんする。はあ、こういうのに弱いんだよな....私。
「大丈夫です。今日はごちそうさまでした。」
「おつかれ。あ、さすがに今日は送るよ。もう22時前だ」
「大丈夫です。会社の会なら終電でも一人で帰れますし」
「じゃ終電まで付き合う?」
「え」
「冗談だよ。」
響さんはそう言って捕まえたタクシーに私だけ乗せ
「これだけありゃ足りる?明日釣り返せよ」
と言って去った。
男前だな.....。
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