歓迎会で森田さん酔いがまわる
歓迎会が始まった。無条件に人数分の生ビールがやってくる。昼から出勤してきた吉田さんが私の他に唯一の女性。
私は吉田さんの隣に座る。
生ビールを店員さんから受け取り、みんなに「はいっどうぞ」と渡すのは、森田さん。
ペコペコ渡す姿が......痛々しく私は一緒に手伝った。
「じゃ、よーこそ まこちゃん!我社へ。かんぱーいっ」
「ねぇねぇ、まこちゃんお酒イケる派?」
ギャルが抜けきらないみたいな30歳くらいの吉田さんが私を気遣う。
私は、お酒イケる派です。毎晩のように晩酌。が、たいがいは一人酒....。
「強くはないですが....いえむしろ好きです」
「やったー!よかった。なんかさぁ可弱い女子だったらめんどくせーなと思ったのよ」
「あぁ 可弱くは....」
「ねーねー!まこちゃん彼氏いるの?」
「ゴリ!いきなり聞きすぎだろ」
そう突っ込むのは私の左の席の
個人的には優しくて気がつくこういう人が好み、私には無縁なタイプ。この人は既婚者らしい。
「彼氏は....」
空気が変わる。みんな新人には興味津々だ。
私はそれなりに彼氏はいたが、最近めっきりご無沙汰である。
最後にちゃんと彼氏と呼べる人がいたのは.....1年まえか、えっ!違うもうすぐ2年。私.....?!20代半ばの女が。
予定のない休みの日は、出不精で家にこもる。部屋着で買い物まで行ってしまう.....完全に、ひとりが楽になってしまったタイプ。
「いません」
「えー!!意外っ」
たしかに、身なりには気を使ってる。髪も爪も化粧はまぁ敏感肌だからそれなりに。
香水未満のコロンと汗拭きシートで体臭もケア。ヨガだって。
元カレに振られた理由がなんせ
「なんかさ、俺、おっさんと居るみたい」
だったから......。
そろそろお開きかな?
という頃、不審者が1名いる。
部長代理の
いや、不審者は2名。
「んもぉーやめてくださいって。くすぐっ あ やっやめてくださいって」
そう悶え苦しむのは、河野さんにちょっかい出されてクネクネする森田さんだった。
「ひゃははっもぅー森田は可愛いわねっ ほら」
え......河野部長代理 話し方.....そっち?
完全にゲイ?見た目は普通の三十代の男性。ブサイクとかでもない。
昼間は言葉数も少なくインテリっぽいし。
「河野さん、バツイチなんだって。多分理由はあれよ」
吉田さん、言われなくても大丈夫。察した。
「はぁ 意外なもんですね。」
河野部長代理はとろんとした目でおしぼりいじくりながら、森田さんを見つめてる。なんだこの職場は.....。
帰りは部長や河野さん、吉田さんもタクシーで帰った。私は微妙な距離なのでタクシーは高い。
節約派の私はJR東西線の駅へ。まだあって助かった〜
横を見れば、ずっと私の後ろをついて歩いてきたらしい、酔いが回って気分悪そうな森田さんが。
「大丈夫ですか?森田さんもこっちですか?」
「ふぅ はぁい そうっすぅ」
私は森田さんを気にしながら、改札を抜け、座席に座るよう促し、自分の駅で降りようと
「じゃ私ここなんで」
「僕も.....」
「え?」
「僕 ここですぅ」
まさかの同じ駅だった。
改札を出たコンビニ前で
「水とかいりますか?」
「いえ、大丈夫っですぅ。すいません。いつものことなんで....置いていってください。」
そ、そういわれてもコンビニ前で蹲ってしゃがむ森田さんを放置?知らない人でもどうしましたか?っていうレベル...。
私は水を買ってきた。
しばらく無言でとなりにしゃがむ。
「あぁーだいぶマシです。」
そう言って立ち上がった森田さんは、走ってコンビニ奥の草むららしき場所で.... 吐いた。
あぁ こりゃ大変.....。
なんとか酔いが落ち着いたのか、申し訳なさそうに
「ありがとうございました。帰ります」
と森田さんは立ち去った。
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