真・巻き込まれ召喚。 ショタアス探検隊

山口遊子

第1話 ショタアス探検隊出発!

[まえがき]

2021年9月1日。本編完結していますが、500万PV達成しました。ありがとうございます。感謝SS全2話。よろしくお願いします。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 シャーリーも成人し、家のことは彼女に任せることができるようになった。


 最初のころの孤児奴隷は解放までに1、2年かかったが、今ではうちで孤児奴隷を購入したらその場で解放されるようになった。解放された孤児奴隷たちも最初のころの連中はみんな成人して屋敷を出ていった者も多いが、残っている者も多い。毎年孤児奴隷は購入しているので、王都内の屋敷が狭くなってきた。トンネル東口のベビーダンジョンの出入り口近くに新しい屋敷を建てようかと思ったが、トンネル東口周辺は鉄のダンジョンからの鉄鉱石と石炭、鉄などを原料とした鉄関係の工房が並ぶ工房街に近いため、やや場所を離してかなり広い敷地で大きな屋敷を建てることにした。


 俺はいまリリアナ女王の相談役を仰せつかっている。いちおうは大臣相当ということになっているが、陛下の茶飲み話のお相手が主な仕事だ。アスカは俺の秘書官で副大臣相当だ。偉くなった実感は全くないが俺もアスカも肩書だけはずいぶん偉くなった。


 そんな感じで日々を過ごしていたところ、


 中央砂漠の真ん中あたりで、砂嵐が止んだ後に高さが10メートルほどのピラミッドが現れた。という話をアスカが仕入れてきた。


 高さが10メートルではかなり小さなピラミッドだが、俺は、砂の中に巨大な本体が隠されていると踏んでいる。


 前々から俺とアスカの二人で世界の不思議を探して旅をしようという話をしていたので、不思議探検第1弾として、そのピラミッドを調査しようということになった。


 しばらく休暇を取りたいと陛下に願い出たらあっさり認められたので、さっそくスカイ・レイでそのピラミッドを見つけに行くことにした。休暇が簡単に認められたのは日ごろの行いの賜物たまものだろう。陛下には何かしらお土産みやげが必要だな。



 スカイ・レイは改修を重ね今では時速400キロで飛行できる。中央砂漠の真ん中あたりまで王都から約2000キロ。屋敷から5時間の旅だ。高性能探知機のアスカもいることだし上空からだけでも何もない砂漠の中でピラミッドを発見することはそれほど困難ではないはずだ。それでも見つからなければ発見するのに時間がかかるだろうが、それも探検の醍醐味だいごみだ。


 屋敷から2000キロでは世界の不思議発見というほど遠くはないが、探検第1段とすればいいところだろう。



「『スカイ・レイ』発進!」


「『スカイ・レイ』発進します」



 早朝から出発して今は昼前、そろそろ出発してから5時間が経過する。ピラミッドが見つかったのは中央砂漠の真ん中あたり。王都セントラルからパルゴール帝国の帝都ハムネアに続く街道は中央砂漠でとぎれているため、砂漠の中に方向を示す柱が東西に並んで建っている。その柱から南へ数キロ離れたところでピラミッドが見つかったという話だった。


「マスター、それらしいものを発見しました。11時の方向5キロほど先です」


 高度を500メートルまで下げ、速度も失速すれすれの200キロまで下げたスカイ・レイが、街道からわずかに南へ外れて20分ほど飛行したところで、アスカがそれらしいものを見つけた。


 前面のキャノピー越しに砂漠に突き出た三角形が小さくわずかに見えた。


「下りてみよう」


「はい」



 着陸したスカイ・レイを収納し、目の前の小山を見ると、高さは5メートル。見た目はタダの小山だった。小山の表面は砂漠の砂の色とほとんど変わらないし、ざらざらしているのでおそらく砂岩だろう。表面を触ったところかなり柔らかい感じで、ボロボロと崩れる。砂岩というより砂が固まっただけのような感じもする。


「発見された時の大きさが10メートルあったというのが本当なら、ずいぶん砂に埋まったようですね。それとも風で吹き飛ばされて小さくなったか」


「そうだな。放っておいたら完全に砂に埋まっていたか、風に飛ばされて無くなっていたかも知れなかったな」


「これは、本当にピラミッドなのでしょうか?」


「アスカ、上の方を少し削っても見てくれるか?」


「はい」


 上から2メートルほどの砂?をアスカが崩したところで、残った台形の小山の一番上の真ん中に30センチほどの薄黄色の金属に見える四角錐が出てきた。


「金属ですね。見た感じ、この四角錐がそのまま下まで続いているようです」


「砂を削り取る感じで、四角錐の一面に沿って砂を収納してみるか。どっかで見たか聞いたんだけど、ピラミッドには王さまのミイラが眠る玄室げんしつまで一直線に続く孔が空いていて。玄室からその孔を見ると北極星が見えるとかどうとか。ここはエジプトじゃないけれど、ピラミッド型は同じだし、北側の斜面に沿って砂を収納してみよう」


「砂ですからかなり崩れるでしょうが、10メートル刻みくらいで広めに斜面を削り取っていけば斜面もあまり崩れず金属面が露出すると思います。」


「そうだよな。やってみよう。うまくすれば、出入り口になるような孔が見つかるかもしれないし、何も見つからないようならピラミッドに孔を空けるだけだものな。それじゃあ、『収納』」


 砂を収納してざっくり四角錐の北側の面に沿って深さ10メートルの断面が逆向きの台形になるような幅広の溝を掘ってやった。溝の左右の斜面はだいたい45度なので、思ったほど砂は崩れなかった。それを数回繰り返した見たが、予想していた孔のようなものは見つからなかった。


 砂に埋もれていたのだから孔が塞がっているほうが普通なので、表面をよく見て、孔の入り口を探さなければいけない。


 露出したピラミッドの斜面をゆっくりと降りていく。45度の角度は斜面に立つととんでもない急角度に見えるので、アスカに片手を持ってもらっている。アスカ自身は数本の髪の毛をピラミッドの金属面に撃ち込んでアンカーにしている。


 斜面を少しずつ下りながら二人で表面を確認していったが、これといった変わった部分を見つけることはできなかった。


 底まで下りたがやはり何もない。


「おかしいなー」


「もっと下でしょうか?」


「面倒だし、この際だから孔を空けてみるか。アスカ、この底の真ん中あたりに人が通れるような大きさで切れ込みを入れてくれるか? そしたらそこを収納するから」


「分かりました。……。できました。金属の厚さは50センチほどでその先は空洞です」


「50センチか。何にせよ人工物だしな。それじゃあ、収納」


 今見えているピラミッドの底の真ん中あたりに高さ2メートル、幅1メートルくらいの孔が空いた。アスカの言ったように収納したのは50センチほどは金属だった。


 空いた孔の中を覗いてみると、孔の先はアスカが言ったように空洞が広がっていた。空洞の中を見渡すと、うすぼんやりと中の様子が見て取れた。その空洞は大広間だった。


 俺たちの立っている今空けた孔の位置は大広間の床から50メートルほどの高さがある。どうもこの大広間は床の一辺が200メートルもある正方形の大広間のようだ。その床の真ん中に小さなピラミッドが立っていた。小さいと言っても一辺が40メートルはある。そのピラミッドの頂上がどういった仕組みだかわからないが橙色に輝いていた。その光のおかげで大広間の中が真っ暗ではなかったようだ。


「アスカ、ここからどうやって下に下りようか?」


「下の床まで50メートル程ですから、私がマスターを抱いて、髪の毛を壁に突き刺しアンカーにして、ゆっくり伸ばしながら下に下りましょう。帰りはその逆で簡単に戻れます」


「分かった」


 気づけば俺はアスカにお姫さま抱っこされて、ゆっくり大広間の床まで下ろされた。アスカの腕の中で大広間の空中を下りていく間、周りを見まわすと、床も斜めになった壁同様薄黄色の金属製のようだ。


「マスター、最近体重を計ったことはありますか?」


 いきなり言われたが、お姫様抱っこの後だけにぎくりとする。


「いや、最近は計っていない」


「そうでしたか」


「なんだよ、アスカ? 俺が重くなっていると言いたかったのか?」


「いいえ、ただ聞いただけです」


 アスカに遊ばれてしまった。まあいい。今は探検だ、探検。


「まずは、目の前の小ピラミッドだな。表面がテカテカしているし色も一緒だからこいつも床や壁と同じ金属だな」


「そのようですね。私では判別できない金属のようです」


「そうか。あとで鑑定してみよう。

 ミニマップでは今のところ罠などはないようだが、何かのはずみで罠が活性化するようなことがあるかもしれないからアスカも注意しておいてくれ」


「はい」



 小ピラミッドのてっぺんの光だけではいかにも暗いので、カンテラをつけて小ピラミッドがどんなものか、まず周りをぐるっと一回りしたところ、俺たちの入ってきたのは北側だが、反対側の南側に扉のようなものがあった。


「扉だよな」


「そうですね」


「どうすれば開くかな?」


「取っ手のようなものもボタンのようなものもありませんから、前に立てば自動で開くんじゃないでしょうか?」


「なるほど」


「私が近寄って試してみます。何が出てくるかは分かりませんから、マスターは正面から少しズレて下がっていてください」


 アスカが扉に近づいていく。何が起きるか、それとも何も起こらないか? アスカの言ったように扉から少しズレたところから見ていたが、アスカが扉に近づくと予想通り扉は勝手に左右に引っ込んで出入り口が開いた。


 扉の先には当たり前だが通路があった。幅2メートル、高さ2メートルほどの通路が10メートルほど続いていた。天井がクリーム色に光って通路は結構明るい。


「先にこの謎金属を鑑定しておくか。

 なになに。

 名称:鑑定不能の金属。

 うーん。これじゃあ全く分からないが、鑑定不能ということは、この金属はこの星由来のものじゃない可能性もあるな。そうするとこいつは宇宙船かもな。さすがにそれはないか。

 じゃあ、中に入ってみよう」


 アスカを先頭にして進んだ短い通路の先は、小部屋になっていた。小部屋と言っても今までいた大広間に比べて小部屋というだけで、一辺が20メートルはある正方形の部屋で天井まで10メートルはある。この部屋も天井からの淡い光で結構明るい。そして部屋の真ん中には、鏡のようにピカピカに磨かれた銀色の箱が置いてあった。箱は縦横高さ各々2メートルほどの立方体だ。近づくアスカと俺の姿がその箱の表面に映っていた。




[あとがき]

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