最終話:夫婦と書いてパートナーと読む

 それから、私の両親と姉にも報告をした。恋さんにならい、子供を望まないこともちゃんと話した。恋さんが自分の父親に話してくれたのだ。その勇気に対して私も誠実でありたかった。

父は「別に良いんじゃないか」と、あっさりしていたが、母は否定派だった。しかし、彼の父親からは理解を得たことを話すと、そういうことならと渋々了承してくれた。姉が義母からプレッシャーをかけられていることに対する想いもあったのだろう。そして姉は


「…いいな…私もそう出来るならそうしたい」


 とぽつりとこぼし、涙を流し始めた。


「……姉さん、旦那さんと話そう」


「でも……」


「私も一緒に行く。……それでもし別れようかってことになったら、うちに来てもいいから」


「……気持ちはありがたいけど……離婚して新婚の妹の家に居候とか……そっちの方が地獄だわ……」


「……そうだよね。ごめん」


「……ううん……ごめん。……ありがとう。……ありがとね愛……」


 姉が落ち着いたところで恋さんに車を出してもらい、その日のうちに姉と一緒に姉の夫と話をつけにいった。姉の夫は姉を抱きしめ「君がそうしたいならそうしようか」と泣きながら姉の想いを受け止めてくれた。泣きながら抱き合う二人を見てもらい泣きをしながら、姉の家を後にし、迎えに来てくれた恋さんに報告をした。


「……いい旦那さんですね。……そういうの見ると、ちょっと羨ましくなりますよね」


「そうですね。でも……今の私には恋さんが居ます。恋人は出来なかったけど、大切なパートナーは出来ました。あなたと夫婦——いえ、人生を共に歩むパートナーになれて、幸せですよ私は」


「そうですか。……ふふ。私も今、同じ気持ちです。メグさん、あの時コメントをくれてありがとう」


「はい。ブログやめないでくれてありがとうございます。レンさん」


 こうして私達は婚姻を結び夫婦——もとい、婚姻という名のパートナーシップを結び、人生を共に歩むパートナーとなった。

 今年で結婚10年目となるが、私達の間に子供はいない。代わり——というのは失礼だが、猫と犬を一匹ずつ飼っている。

 私は大学を卒業した後、一般企業に就職したのだが、そこで受けたLGBTに関する講習を聞いて、世の中はまだアセクシャルについての理解がほとんど進んでいないことに気づき、会社をやめてLGBT講師になった。

 LGBTの四つだけではなく、私達のようなアセクシャルやアロマンティックについても広く知ってもらうために。

 私達のように自分はおかしいのではないかと思ってしまう人を、一人でも減らすために。

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夫婦と書いてパートナーと読む 三郎 @sabu_saburou

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