第29話 罰を受ける者~その1~ 俯瞰視点(1)
((あんなことになってしまうなんて……。何もしなくてよかったわ))
長時間もがき苦しみ、涙とよだれを垂らして失神。クーレル家の使用人達によって担架に乗せられている、新たな『化け物令嬢』メラニー。そんな彼女を眺めながら、安堵の息を漏らしている者達が居ました。
((危なかった……。もしかすると、わたくしがあのようになっていたかもしれませんわ))
((あの夜、なにかしてあげようと思っていたけど……。方法を探さなくて正解だったわね))
オーティル侯爵家令嬢・アンナ。ディレハスト侯爵家令嬢・フィリス。テルタン伯爵家のフィアーナ。などなど、計9人。
彼女達は同じくパトリシアの容姿に嫉妬し、攻撃の意思を持っていた者。そして『化け物令嬢』という呼称を広め、いつも陰口の起点となり、同じくワザとパーティーに招待し続けた者達でした。
「念のため揺らすなっ! 細心の注意を払ってお運びしろ!」
「「はいっ!」」
「………………………………………………」
((顔はボコボコで、涙と唾液まみれ。なんて醜い、無様な姿なのかしら))
((この有様では、お相手なんて見つかるはずがありませんわ。終わり、ですわね))
((ブロンシュ家――筆頭公爵家にも、目をつけられましたし。メラニーさんも、クーレル家も、真っ逆さまですわね))
使用人によって、運び出されていくメラニー。そんな姿を眺めながら白い眼を注ぎ、密かに嘲笑を浮かべます。
((昔のパトリシアさん程ではなかったけれど、メラニーさんも目障りだった。邪魔者が消えてラッキーですわね))
((パトリシアの復活は誤算だったけれど、あの子には相手が居ますもの。子爵家如きが筆頭公爵家と――。腹が立つ要素はありますが、邪魔者にはなりませんものね。よしとしましょう))
((自ら退場してくださり、ありがとうございました。わたし達に道を譲ってくださったこと、長年楽しませていただいたこと、感謝いたしますわ))
彼女達もまた、メラニー・クーレルと同類。今度はメラニーの不幸を悦び、鼻から息を抜いていた――その時でした。
「「「「「!? 顔が……!?」」」」」
9人全員の顔が、まったく同じタイミングで変形を始めたのでした。
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