第2話 お聞きしたかったこと(1)

「ブロンシュ様。どうして、私に興味を持ってくださったのでしょうか?」


 会場の隅で十数分ほどお喋りをゆったりと行い、ちょうど一つの話題がお仕舞となりましたし、体も落ち着きましたので。ずっと気になっていたことを、質問させていただきました。

 今の私はコブだらけで、『化け物令嬢』。老若男女問わず距離を取られ気持ち悪がられているのに、なぜお声をかけていただけたのでしょうか?


「見る目がないとも、仰ってくださいました。どうして、なのでしょう……?」

「…………その理由は、自分でもビックリしてしまうものなのですよ。不可思議ですが、事実ですので。落ち着いてお聞きくださいね」

「は、はい。お、お願い致します」


 そんな前置きを聞いた私はごくりと唾を飲み込み、綺麗な唇を見つめます。そうしているとそのお口がゆっくりと開いて、


「僕には、貴女の姿が二つ見えているのですよ」


 構えていても、無理でした――。それはあまりに予想外なお言葉で、私の目は点になってしまいました。


「はっきり見えているものと、その背後にうっすら見えているものがありましてね。この目には、白い肌と柔らかなタレ目が相まって、新雪で作った雪ウサギのように感じる方も見えているのですよ」

「…………雪ウサギ……。それは……。それは……っ。昔、私がよく例えられていた動物です……っ」


 お父様、お母様、おじい様、おばあ様、そして、当時は居たお茶会仲間の皆様。そういった人達から、そういったお声を頂いていました。


「やはり、そうでしたか。予想通り、本来のお姿が映っていたのですね」


 ブロンシュ様は納得顔で頷かれ、改めて、私の両目を――コブによってほとんど塞がってしまっている瞳を、見つめました。


「そのお姿の中にある、はっきりと伺えたブルーの瞳。それはまるで、真水のように透き通っていました」

「そ、そう、なのですね……」

「恐らくは、いいえ、間違いなく。そんなお姿となっても貴女は、何かを恨まず、妬まず、真っすぐ生きてこられたのでしょう。……だから、それは必然的でした」


 ブロンシュ様はここで一度言葉を止め、一度視線を上下させます。そうしてこの方は#もう一つの姿__うしろ__ではなく『化け物令嬢』の方の姿をじっくりと眺め、


「そんな素敵な性質を持つ貴方という女性に、瞬く間に惹かれ、恋をしてしまったのですよ」


 幸せそうに、目尻を下げてくださったのでした。

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