失敗エンジニア
シヨゥ
第1話
段差で何度かつまずけば「ここは注意して歩こう」なんて意識が芽生える。
動物であれ、人間であれ失敗から学んで進歩していくのだ。
「二の舞はゴメンだ」、「次こそは」そんな思いが意識せずとも深層に生まれる。
その芽生える早さは個体により異なるし、経験した事象によっても異なる。死に瀕した危機的状況に遭遇した場合は芽生えが早いように思う。生きようとする本能がそうさせるのだろうか。
しかしながら例外は存在する。概念上「死」が存在しないアンドロイドたちがそれだ。
目の前でボロボロになったアンドロイドが先程運び込まれた。トラックに跳ねられたらしい。
彼らも体験から学ぶ。だが段差につまずいた経験も、トラックに跳ねられた経験も彼らにとって同列に扱われている。
僕ら人間は例えつまずいたとしても、トラックに跳ねられないよう慎重になる。しかしながら彼らはつまずき注意するレベルの危機感でトラックを注意するのだ。
だから僕のようなエンジニアがメンテナンスをする。映像を解析し、事件ごとに重要度を設定する。いわば失敗を学ばせているのだ。
アンドロイドとはいえ家族は家族だ。失敗の末完全に破壊されてしまったとしたら喪失感は計り知れない。そうならないためにも僕等がいるのだ。
失敗から学ぶ。そうやって僕ら人間はここまでやってきた。彼らアンドロイドと生きるこれからの世もそれは変わらない。この失敗が次へつながれば、きっと素晴らしい世の中になるだろう。
失敗エンジニア シヨゥ @Shiyoxu
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