紐と糸

 紐と大差ない私。昨日も今日も、今日も明日もきっと大差はないんだろう。


「女性の場合そういう言い方はしないでしょ」


「なら適切な言葉を教えてよ」


「君は完全に甘えきってるわけではないしね」


「ぼんやりした気持ちで仕事を辞めた時点で十分甘えてるよ」


 寝間着姿で横になったままの私を見下ろして、彼がふっと笑った。袖口のボタンを止めている。時刻は朝の七時半。


「紐じゃなくて、糸だと思うな」


「存在としては弱々しくなってるような…」


 考え込む私の頭の上に、大きな手がぽんと乗った。そして撫でる。明後日の方向に跳ねているであろう毛先を押さえつけるように。


「垂らされたし、結ばれたから。じゃ、行ってきます。姫はまだ寝てな」


 冷静に考えればそれってどちらも仲介役では、と思ったけれどその頃にはもう夢の中。今日も甘えてごめんなさい。

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