ばらばら原稿用紙

川上毬音

きみはぼくのもの

 あいつが来てから、君は僕を抱いてくれなくなった。


 君はあいつの腕の中、安心しきった顔で眠っている。かたや、ベッドの隅に追いやられ、壁にぎゅうぎゅう押し付けられる僕。君と二人きりの幸せな夜が恋しい。


「邪魔だから、寝る時はあっちに置いておこうか」


 夜、あいつが言った。おい、よそ者に邪魔者扱いされる覚えはないぞ。


「そうだね」


 君は何の躊躇いもなく、僕をベッドから遠く離れた棚の上に置いた。じゃれ合うように一枚の毛布にくるまった二人が寝息を立て始めるまで、そう時間はかからなかった。


 君は悪くない。あいつが憎い。横取りなんて最低野郎のすることだ。


 最低野郎はそのうち僕を赤くて大きなあの袋に入れて、月曜日に外へ出すに決まってる。


 そんなこと、死んでもさせないからな。

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