ガーレット国からの手紙と対応
ガーレット国からの騎士団がグレシア辺境伯家へ訪れてから約1月。
あれからガーレット国から何の音さたもありませんでした。
おそらくグレシア辺境伯様が予想していた通り、騎士団を向かわせたとはいえ、最初から私が戻ることはできないとわかっていたのでしょう。
「レミリア宛にガーレット国の国王と王太子の連名で手紙が届いたのだが」
そう言ってアレスが私の元に仰々しい封筒に入れられた手紙を持ってきました。
これまで何もなかったので今後もないと思っていましたが、ここに来てこれですか。内容が気になるところですが、同時に何が書かれているのかを確認するのが怖いですね。
「これは1度王宮を通して送られて来た物だから、既に内容は把握されている。さらに言えば父上も内容を確認し、レミリアに確認させても問題は無いと判断しているものだ」
「そうですか」
私に見せて問題ない。そうアレンシア王国が判断されたとはいえ、それはあくまでも国にとって問題になるようなことは書かれていない、そう言う事でしかありません。ただ、グレシア辺境伯様も同じように判断されたという事は、この手紙を読んでも不快になるようなことは書かれていないのでしょう。
そう判断して、封筒の中身を取り出して手紙の内容を確認します。
手紙の内容は確かに問題になるようなことは書かれていませんでした。
ガーレット国へ戻るように脅すような文言は一切なく、基本的に謝罪の言葉が書かれている感じです。
ただ、脅し文句のような物はありませんでしたが、やんわりと国へ戻らないか、現在婚姻を結んでいる者は次男であり、家名の継承権もないはずなので婚姻した状態で戻って来るのであれば、その者も受け入れることは可能である。
といった感じの提案が書かれています。
また、私の実家であるオグラン侯爵家の現状を知らせる文章もありました。
この手紙に書かれていることが本当であれば、オグラン侯爵家は今回私が国外へ移動してしまったことも含め、いくつかの理由によりお取り潰しになってしまったようです。
手紙には私が逃げ出したことが原因、とは直接書かれていませんがおそらくいくらかは関わっている気がしますね。何故かお父様の処分理由がガーレット国に対する謀反となっていますが、これについてはよくわかりませんけれど。
まあ、お母さまが亡くなった事件の後から軍と王族に対して良い感情を持ってはいなかったようですから、その感情から何かをしたのかもしれません。
お父様はお母様の事が本当に好きでしたからね。
あの事件が起こる前から、軍には否定的でしたし、なるべくお母さまが軍の行動に関わらないよう意見を出して画策していたらしいです。まあ、王族の指揮下にある国軍にはその意見は却下され、結果としてあの事件が起きてしまった訳ですが。
そんな訳でお父様は昔からガーレット国の上位陣の事を信頼していませんでした。それが今回の謀反に繋がったのかもしれません。
それで、そのお父様なのですが、どうやら行方不明になっているようです。もし居場所がわかるようなら連絡をして欲しいと書かれています。
何となくお父様が居そうな場所に心当たりはありますが、私もガーレット国に良い感情は持っていませんので、関わりたくはありません。なので、連絡はしない方向にしようと思います。
とりあえず、オグラン家については特にこれ以上気にしなくても大丈夫でしょう。
お父さまはあれで能力の高い方ですから自力でどうにか出来るでしょうし、現に逃げ果せている訳ですから多分想定の範囲内なのでしょう。
ただ、リーシャについて何も記載が無いのがほんの少し気になります。
まあ、あの子については自ら進んで行った道ですから、気にしないでもいいかもしれません。あまり練習をしていなかったとはいえ、あの子は回復魔法が使えますし、それを使えば何処でも生きて行けそうですからね。
「読み終わったみたいだが、どうだ?」
手紙を封筒にしまったところでアレスがそう声を掛けてきました。その問いからしてアレスも手紙の内容は把握しているようです。
「特に何も、ですね。あちらに帰るつもりなんてありませんし」
「そうか。お前の父親である侯爵は探さなくても良いのか?」
「別に探す必要は無いと思いますよ。それにお父様が居そうな場所はおよそ見当がつきますから」
お父さまが居なくなったのなら、おそらくお母さまのお墓のある場所へ行っているのでしょう。今回の謀反で廃爵になってしまいましたから、そのことについて報告しに行っただけだと思います。
それにお父さまが見つかっていないのは、お母さまのお墓は普段過ごしている屋敷から大分離れた位置にありますので、そこまで捜索が及んでいないだけだと思います。まあ、お父さまにはお墓参りのついでに逃げる、という意図もあると思いますけれどね。
「……そうか。レミリアがそう言うならいい。俺はオグラン侯爵について、あまり知らないからな」
「お父さまはここへは来ませんでしたからね。知らなくて当然だと思います」
お母さまの楽しみの邪魔をしたくなかったのかそれとも他の理由があったのか、お父さまはお母さまの実家へ訪れるとき以外、頑なにアレンシア王国へは来ようとしませんでした。
そう言った理由でグレシア辺境伯領は通過する以外に訪れたことはなかったので、アレスはもとよりグレシア辺境伯さまも直接の認識はほとんどないかと思います。
「そう言えば、そうだったな」
そうアレスが昔を思い出すように言うと同時に、私は手に持っていた封筒をアレスに差し出します。
「私はここから出て行くつもりはありませんし、ガーレット国へ戻るつもりなんて一切ありません。ですので、これは処分していただけると助かります」
「ふっ、ああ、こちらでしっかり処分しておこう」
いきなり差し出された封筒に少し思案したようすを見せた後、私が差し出した封筒を受け取ると、いい笑顔でそう言いました。
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