私がお姉さまよりも劣っているですって!? ※リーシャ視点

 

「ふぅ」


 回復魔法を掛けたことでグリー王子の怪我は十分に回復した。これぐらいまで回復すれば皮膚の爛れた跡も残らないわよね。


 私はそう判断してグリー王子に掛けていた回復魔法を止める。グリー王子の怪我が思いの外重かったらしく、私の魔力は半分ほどまで減ってしまっていた。


「う……?」


 怪我から回復したことで意識を取り戻したのか、グリー王子が小さく声を漏らした。そして目を開き、周囲の光景を確認している。


「ああ、そうか。救護室……という事は、誰かが回復魔法を掛けてくれたという事か」

「ええ、そうですよ。グリー第2王子」


 少し含みがある言い方で大臣が目覚めたグリー王子に声を掛けた。


「…………っと、ここにリーシャが居るってことは君が回復魔法を掛けてくれたってことでいいんだよね?」

「そうですよ」


 グリー王子が大臣の発言を無視して私に声を掛けて来たので、すこし戸惑いながらも短く返事をする。


 どうやらグリー王子とこの大臣の仲は悪いみたいね。まあ、話し方からして小言が多そうな老人だし、私も上手く付き合えるとは思えないわね。


「そうか、ありがとう。とりあえず、治ったならここからぐっ、うん?」


 救護室のベッドから立ち上がろうとしたグリー王子がどうしてか表情を歪ませた。ああ、まだ回復魔法で治したばかりだから不完全なところでもあったのかしらね。


「どうしましたかな。王子?」

「いや、腹部に痛みが走ったのだ。たしかにこの場所は襲撃して来た者に刺された場所なのだが」

「はて? リーシャ殿はしっかり回復魔法を掛けたのではないのですかな?」


 グリー王子が不意に痛みを覚えたことに何の疑問があるのか大臣が私の顔を覗き込んでくる。


「しっかり掛けましたわ。私の魔力が半分も消費するくらいの酷い怪我だったので、回復しきれなかっただけですわ。別にこう言ったことは普通でしょう?」


 私の言葉を聞いて大臣は少し考えて込んでいる様子を見せた。そして、少し間を開けてからグリー王子の方へ向いた。


「リーシャ殿はあの方と同等の力を持っていると聞き及んでいたのですが、私の方へは虚偽の報告がなされていたのですかな?」

「いや、私もオグラン侯爵からそのような報告を受けている」

「ふむ、そうですか」


 そう言って大臣はもう一度考え込むような仕草をした。


「何の話をしているのかしら?」

「ん? ああ、君の回復魔法が報告を受けた程の力が無いようなのでな。それについての話だ」

「は? どういうことですか?」


 大臣の言っていることが理解できずすぐに確認をする。


「リーシャ殿の姉であるレミリア様は今回グリー王子が受けたような怪我ならすぐに動けるまでに回復させられたのですよ。それで、私たちは貴方の回復魔法も同じ程度の力があると聞き及んでいたのですが、そうではなかった」

「はぁ!? それって私の回復魔法があのお姉さまに劣るっていると言うのですか!?」


 私の回復魔法がお姉さまに劣るなんてことはないのよ。あんな誰の指示にも従うような自己の薄い人よりも劣っているなんてありえない。

 それにあっさりグリー王子の婚約者が私に変わったのだから、むしろ私の方が強いはずよ。


「まぁ、そういう事です。すいませんが、私はやることが出来たので失礼します」


 そう言って大臣は周りの使用人に指示を出し、すぐに救護室から出て行った。


「まあ、怪我を治してくれたから私はあまり気にしないよ」

「え、えぇ」


 そう言ってグリー王子は私に笑みを向けてきました。ただ、その言葉とは裏腹にその笑みには私に向けた少しの失望が隠されている気がしました。

 

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