婚約者が浮気をしているようだ ※リーシャ視点

 

 王宮で過ごし始めてからそれなりの時間が経過した。


 時折、グリー王子が早く部屋に戻り、そのまま寝てしまう事もあるけれど、今のところ問題なく婚約者として過ごすことが出来ている。


 何故か、早く部屋に戻る時は私を部屋に入れてくれないけれど、もしかしたら1人でゆっくりしたいのかもしれないわね。


「グリー王子の今後の予定について知りたいのだけど」


 とは言え、ここ何日か会っていないのよね。さすがに同じ場所に住んでいる婚約者として何日も会わないというのは駄目よ。それに、会食の誘いも少ないし。もう少し回数を増やしてくれないのかしら。


「王子の予定については、当面は執務になりますのでしばらくは王城の執務室に居ることになります。ですが、頻繁に予定していない外出をなされる方なので、絶対に居るとは……」

「そう」


 王宮で私に着いている側仕えに声を掛け、聞いてみたのだけど、前に聞いた時と一緒ね。でも、前にグリー王子の執務室に行った時は居なかったし、結構忙しいのかしら。でも、夜は早く寝ることもあるし、何なのかしらね。


「今日はどうなのかしら」

「予定通りでしたら、執務室で仕事をしているはずですが……」


 歯切れが悪い。本当にグリー王子は昔からそういう人なのね。でも、予定を無視してでも別の事をするというのは、それが重要な要件なのでしょう。


 本当なら邪魔をするのは良くないのだけど、私の事をもう少し構って貰わないと婚約者になった意味が無いわ。それに、どこかへ行くのなら、どこに行っているのかくらいは伝言を残してもらうように話しておかないと。


「ちょっと、グリー王子の執務室へ行って来るわ」

「…………了解しました。お供します」

「ええ」


 側仕えが止めた方がいい、行かない方がいい、そんな感じの表情をしているのだけど、何もしない訳にもいかない。このまま何もしなければグリー王子との会食は増えないし、接触する機会も増えない。


 何もしないなんて駄目なのよ。自分の思い通りにするには、待っているのではなくて自ら動かないと何も変わらないのだから。私がグリー王子の婚約者になったようにね。



 グリー王子の執務室の入り口が見える所までやって来た。


 この執務室は私が過ごしている私室のある場所から少し離れた位置にある。

 基本的に他の執務室もこの付近にあるのだけど、グリー王子の執務室はその場所の端にあるのよね。すぐに移動しやすい位置では無くて、結構奥まった場所。だから人通りは少ないのだけど……。


 グリー王子の執務室からグリー王子といつも執務を補佐している使用人の女が出て来た。


 2人は主従関係のはずよね? でも、見るからしてグリー王子とその使用人の女は、主従関係というよりも別の関係のように体を寄せて……、明らかに恋人といった態度じゃない?


 グリー王子がその女の体を触り、それを使用人の女は恥ずかしそうに受け止めていた。


 何よこれ。

 どういう事なの?


 目の前の光景が本物なのか、確認のために後ろに控えている側仕えの方を見る。

 側仕えは明らかに、だから止めた方が良いと態度に出したのに、といった表情をしていた。


 側仕えの表情を見て、目の前の光景が間違いではない事を知った私はもう一度、グリー王子たちの方を向く。

 すると、あちらもこちらに気付いたのか、王子は少し気まずそうな表情をしていた。しかし、王子の手は使用人の女から離れることはなく、それに気づいた使用人の女は、私の事を馬鹿にするような表情をした。

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