第2話【トニー隊長side】リストラで我がパーティは最強だ(自称)
――その頃、冒険者ギルド≪ブラック・バインド≫のギルドマスター室。
「トニー隊長、リストラの方は着々と進んでいるか」
ギルマスのクラッブが、Sランクパーティの隊長トニーにそう語りかけた。
トニー隊長は、自らも部隊を率いると同時に、ギルマスの右腕としてギルドの運営も担っていた。
「はいギルマス。我がパーティでも、Fランクの無能冒険者を追い出したところです」
トニー隊長が言うと、クラッブは顎のヒゲを撫でながらアトラスの顔を思い出した。
「ああ、あの無能君か」
「はい。ギルドに入って5年間(・・・)、一度も昇格することなく、ずっとFランクのままでした。本当に愚鈍なやつで、いつもダメージを受けてばかりでした」
トニーが言うとクラッブはねぎらいの言葉をかける。
「ご苦労だった。今まではメンバーを大切にするという大義名分のもと、無能でもクビにできなかったからな。君のような優秀な人間にも無能の面倒を見てもらう必要があったのだ」
現ギルマスのクラッブは≪ブラック・バインド≫が創設された最初期から参画しており、ちょうど先日、二代目のギルマスになったばかりであった。
そして初代ギルマスが経営から手を引くや否や、待っていましたとばかりにリストラを始めたのだ。自分を優秀な人間だと思い込んでいるクラッブは「無能」が許せなかったのである。
そんなクラッブに、右腕であるトニーは終始こびへつらう。
「はい、苦労しました。しかし、さすがはギルマスです。リストラを断行したことで、我がギルドに無能はいなくなりました」
「その通りだ、トニー隊長。これからは実力主義の組織にしていかないと大手ギルドといえども生き残れない。リストラは我々≪ブラック・バインド≫が、これからますます発展していくには必要なことよ」
「さすがギルマスです」
「トニー隊長も、うかうかしないように。お前はこの5年間(・・・)で多くの功績をあげてきた。その実績が消えてなくなることはないが、いつまでも過去の栄光にとらわれてはならないぞ」
「もちろんです、ギルマス。これからますます成果をあげますよ!」
「頼んだぞ」
ワハハと笑うギルマスと隊長。
「ところで、一応あの無能がいなくなった穴を埋める必要があるだろう。確かFランク君は前衛だったな?」
「はい、ギルマス」
「転職ギルドに、Aランクの前衛を手配してもらった。明日、面接に来てくれるはずだ」
「ご配慮、ありがとうございます! 我がパーティは既に最強レベルですが、無能が抜けて代わりにAランク隊員が入れば、もう怖いものなしですな!」
「その通りだ。期待しているぞ」
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