【スクール】暇を持て余した学生は異世界転生について語ってみる。

雨宮悠理

転生とスキルについて語ってみる会。

「ロイは異世界転生モノ(フィクション)について、どう思う?」


 パイプ椅子に腰掛けた女子生徒は唐突に訊ねた。


「どう思うって、どういうこと?」


「いやさ、転生モノって色んな種類があると思うんだけど、そもそも転生してきた人達って大抵レアなスキルだったり、特別な加護を持ってるのがデフォになってるじゃん? それっておかしいなって思ってて」


「だって、ただ転生して普通の能力しか持たないモブを主役にしたって何の面白みもないじゃないか。異世界は自分の思い通りにならないと、現実世界と変わらないだろ。せめてフィクションの世界くらいは現実逃避させて欲しいのさ」


 さらさら金髪ヘアーの女子生徒は、うーんと唸りながら、いかにも「私、悩んでます」アピールをしている。

 狭い教室に2人きり。青春溢れるシチュエーションの筈なのだが、目の前の長方形テーブルの上には所狭しと転生モノの小説が広げられていた。


「いやー、そもそも転生できた時点でもうその人は特別な訳じゃん? これ以上ユニークスキルとかを求めるなんて贅沢だなって。それに異世界ってそんなに甘い世界じゃ無いと思うの、私」


 そう言うと、おもむろに彼女は指をパチンと鳴らした。途端にバチバチという音と共に辺りに電気空間が形成された。

 そしてボクの身体はピリピリとした痺れに見舞われる。ただ痺れるといっても威力は電気風呂程度のもので、むしろ気持ちいいくらいの痺れだった。


「ほら、これも異能力。あたしも君も転生者なのに、あたしの能力ってパッとしないのよね。これって不公平だと思うの?それとも何?あたしは主役にはなれないっていうのかしら」


 そういって哀しそうな眼をボクに向ける。彼女は転生前はどうだったのか知らないけれど、色白な肌と、透き通った蒼い目を持った理想の美少女そのものだ。

 つまり見た目についてはチート級の加護を受けていると言えるのではないだろうか。


「まあそもそもだけど、君にこの話をしても共感してもらえる訳ないわよね」


 そういって彼女は深い溜息をついた。

 放課後に人を呼びつけておいて、その言い方はないんじゃないか。とも思ったけれど、自分の貰った転生時スキルを考えると、まあ仕方ないのかな、とも思っていた。


 ボクの転生時スキルはハイエンドパーフェクト。ありとあらゆるスキルを使いこなす事ができる。全スキル中、最高クラスのものだった。

 

 

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【スクール】暇を持て余した学生は異世界転生について語ってみる。 雨宮悠理 @YuriAmemiya

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