「水曜どうでしょう」をなぞって

 前話を投稿した翌日に出発をした。私はなのだ。

 エッセイを書いてしまったら、もう待ちきれなかった。急いで荷物を用意して、目覚ましをセット。最近は夜更かしの習慣があったが、軽く酒を飲んで無理やり眠った。


 そして出発当日。7時半に家を出る。ここまでは、ほぼ予定通りだ。若干起きるのに手間取ったが、誤差の範囲だろう。しっかり朝飯も食べて万全の状態だ。

 今日は、月曜の朝。この時間は、いつも通っている国道357号が混むから、高速道路を使う。通勤の車やトラックが多い道なのだ。無職の私としては、彼らに混じって自由をアピールしたいところだが、今回は自重する。


 地元から京葉道路-湾岸道路と乗り、湾岸市川までを走る。この先からは首都高なので、続きは下道へ行く。何しろ長旅の予定だから、金は少しでも節約しておきたい。それでも、楽ができるところは楽をする。見極めが肝要だ。

 その後は羽田空港を抜け、神奈川県道6号線産業道路-国道1号線と走る。今回の旅では国道1号線をかなりの距離走る予定だ。本当は始点の日本橋から走りたいところだが、間違いなく混んでいるので自重した。国道1号線を端から端まで走るというロマンも魅力的だが、ロマンとは半分ずつくらいが適正だろう。


 それでも渋滞は連続する。特に神奈川県内は最悪だ。いつまで経っても渋滞が解消されず、車線変更禁止の道ばかりで、すり抜けもできない。

 さらに、朝は寒かったので冬用ジャケットを着てきたが、段々と暑くなってくる。正に、泣きっ面に蜂だ。

 この時期はバイク乗りにとって、服装が難しい。朝と夜は寒いので、冬用の装備が欠かせないが、昼間は暑くなる。必然的に荷物が増えるので、ロングツーリングには都合が悪い。春からライダーは活発になるが、それも4~5月からが本番だろう。


 しかしながら、耐えていればやがて事態は好転するというもので、箱根を過ぎたあたりから、道が空き始めた。こうなると途端に楽しい。箱根の山は地上よりも寒く(気温10℃)、上着を着直したが、それも大した手間には思えないほど、止まらずに走るのは楽しい。この開放感があるから、バイクは辞められないのだ。

 その後は順調に静岡まで走り抜け、バイパスに乗る。高速道路並みに飛ばせる道で中々に楽しい。しかし、久しぶりのロングツーリングは疲れる。思い返してみれば、前回のロングツーリング秋の諏訪は、半年近く前になる。そりゃ、体力が落ちているわけだ。


 段々と眠気も襲ってくる。もう時間は17時だ。初日は名古屋まで行こうと思っていたが、まだ150kmもの道のりが残っている。途中、道の駅で休憩したり、歌を歌いながら走っていたが、浜松まで走って限界。

 幸い、駅前で朝食付き4000円のホテルを予約できた。部屋もオーソドックスなビジネスホテルで、文句はない。せっかくなので、近くにあったハンバーグ屋の「さわやか」で夕食を食べ、初日は満足だ。


 ちなみに、初日の走行距離は330km。12時間近く走ったにもかかわらず、あまり進めていない。神奈川で渋滞に巻き込まれた影響が大きい。やはり、都内だけではなく、神奈川も高速道路を使うべきなのかもしれない。




 翌日は、寝坊してスタート。6時に起きる予定だったのが、7時半。朝食を食べて8時に出発。遅くのスタートになってしまったが、代わりに道は空いている。驚くほどスイスイと走れる。大体1時間に40km程度は走行できそうだ。初日は1時間で30km以下だったので、段違いである。このペースのまま名古屋はスルー。次は伊勢へ向かう。

 今回の旅の目的地は四国。しかし、時間は腐るほどあるので、伊勢神宮と熊野古道あたりに寄り道することを思いついた。せっかく来た西日本、行ける場所には行っておきたいものだ。


 ということで夕方16時、伊勢に到着。ちょうど雨が降り始めたので、2日目の移動は終了だ。とりあえず、伊勢神宮に参拝しよう。

 私はよく知らなかったのだが、伊勢神宮には外宮げくう内宮ないくうがあるようだ。それぞれ、豊受大御神とようけのおおみかみ天照坐皇大御神あまてらしますすめおおみかみを祭っている。

 と言っても、私はあまり建造物や歴史に興味がない。なので、なんとなく参拝だけした。それよりも、伊勢神宮前の赤福でぜんざいを食べたほうが印象に残っている、と言ったら神様に怒られるだろうか。



 その後は、近くのゲストハウスにチェックイン。荷物を置いて少し休憩したら、伊勢うどんを求めて街へ出る。伊勢うどんについては、悪評もよく聞くが、実際に試してみないと分からないものだ。私は歴史よりも経験から学ぶタイプの人間愚者なのだ。

 しかし、街へ繰り出したはいいものの、店が軒並み閉まっている。まだ時刻は19時半だが、地方ではこんなものなのだろう。それとも、例のウイルスの影響だろうか。

 他には居酒屋か高めの店しか営業していないが、少しでも節約したいので、外食は諦めることにする。代わりに、ゲストハウスに100円でパンが売っていたので、今日の夕飯それだけ。パンと水だけの食事だが、ダイエットだと思えば我慢できる。


 そういえば、ゲストハウスに宿泊するのは大学以来、つまり4年ぶりだ。久しぶりのゲストハウスですが、やはり良いものだ。様々な人と出会うことができる。住み込みのスタッフ(バイト)もいるところだったので、中々に新鮮だ。


 久しぶりにゲストハウスに宿泊して思ったが、知らない人と交流すると一種の孤独を感じる。独りでホテルに泊まっている時よりも強く孤独だと感じるのは不思議だ。だが、私はそんな気持ちも嫌いじゃない。

 「それぞれの個人がそれぞれの人生を生きている、だから人は皆孤独なのだ」そんなふうに感じられる。私も私なりの生き方をしていると再確認できる良い機会だと思う。



 ところで、今回のルートは「水曜どうでしょう」の原付日本列島制覇編で走ったルートとほぼ同じ軌跡を辿っている。羽田空港付近から始まり、東海道と通って伊勢へ向かい、フェリーで四国入りするルートだ。実は、出発前に予定を立てたら、あまりにも似ていたので、急遽DVDを見直したくらいだ。つまりは、水曜どうでしょうの聖地巡礼の旅と言えなくもないのかも知れない。



 さて、次は紀伊半島とぐるっと回りながら、四国を目指そうと思う。しかし、予定通りに進むかは分からない。だから明日が楽しみで、今日も眠るのだ。

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