第二期募集

「いつもの」 〜丘の街の不思議な喫茶店〜 牧田紗矢乃様作

【あらすじ引用】

ある日、突然の雨に降られた男は目に入った喫茶店に飛び込んだ。どこか懐かしさを感じさせるレトロな造りの店内で、一人にこやかな笑みを浮かべる店主。彼は男に席をすすめ、「『いつもの』です」とコーヒーを差し出した。


【良いところ三点】

1*書き出しからとても良い。

文学的な香りのする、お洒落さも感じる冒頭。これは紙で読みたいなと思いました。雨の図書館やバス、電車の中で人の少ない平日の昼間などにじっくり読みたくなる作風です。情景も目に浮かぶようで、時間の流れが少しゆっくりに感じるところもとても好きです。主人公の視線の先の風景や情景。すれ違う人。時間の流れや景色、雨粒までも感じられそう。個人的にとても好きな作風です。


2*繋がっていないようで繋がっている物語。

主人公の切り取った日常のように見えるが、エピソードは繋がっている。主人公は、定年退職後の男性。偏った見方もしているし、一般的で平凡な人物なのだろうと思う。だからこそ好感が持てる。派手なことは起きないが共感が持てるようなこともあり、もしかしたらこれから自分が経験するかも知れないような日常が、そこにある。謎もあり、それに対して自分なりに推測してしまう。そこも物語の楽しみの秘湯である。


3*とても考えさせられる物語である。

主人公の物語は定年の日から始まり、雨によってある出会いを果たす。それは主人公にとってのターニングポイント。この出会いによって、主人公は大切なものを取り戻していく。それはきっと日常の些細なことであり、けれど大切なことでもある。小さなことが大きな幸せに繋がっていることを考えさせられる物語である。

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