第26話 元凶は?
-美優-
暫くすると健太君が来た。
「ごめんね。急に。早かったね」
健太君に急いで駆け寄る。
「ああ、近所の公園とはいえこんな時間だから変な奴とかいたら危ないからさ」
そう言って健太君は笑いかけてくれる。
そのちょっとした気遣いに頬がほころぶ。
「あのさ、ゆっくり話せる所がいいんだけど、何処かいい所知らない?」
「ゆっくり話せる所か。・・・ファミレスとか?」
「あっごめん、ごめん。そういう騒がしい所とかじゃなくて、出来れば2人っきりで話せるような所とか」
そう言って自分で言っておきながら何か変な誤解とか与えてないか少し不安になる。
「う~ん。あっ、カラオケとかは?」
「あっなるほど。たしかに個室だしいいかも」
カラオケに入って何も歌わないのはルール違反かもしれないけど今回は仕方ないよね。
そして2人で駅前のカラオケに行く事になった。
しかしカラオケに着くなり健太君が止めてあるバイクを見て
「あっ、あいつらもカラオケ来てるんやった」
そう言って頭を掻いてる。
「あいつらって?」
私が不思議そうに尋ねると、
「バイク乗ってる友達。出会ったら色々聞かれて面倒臭いかも」
健太君は眉をひそめて笑っている。
ひょっとしてあの女(佐和子ちゃん)もいるのかも。
「健太君。今日は2人っきりで話したいから別の場所でもいい?」
「OK。そうしよう。でも何処にしようか」
さすがにカラオケで決まっていたのですぐに代替案は中々出そうにない。
「健太君の家とかはダメ?」
ここでいつまでもウダウダしてても仕方ないから思い切って健太君の家を提案する。
「えっ!?俺の家?別に大丈夫だけど」
寧ろ健太君の方が戸惑っている。
「じゃあそうしよう」
私はこの場所に留まり邪魔が入るのをとりあえず避けたかった。
そうして、2人で健太君の家に向かう。
やばいな。
冷静に考えたら夜遅い時間に女の方から『家に行きたい』なんて言ったら絶対誘ってると思われるよね?
えっ、健太君がその気になってたらどうしよう?
思わせぶりな言動で最後拒絶したらやっぱり怒るよね?
いや、でも私は今そんなつもりないし、出来ればもうちょっと違うシチュエーションが希望なんだけど・・・
えっ、でもそれはそれで健太君に申し訳ないっていうかなんというか・・・
いや今はそんな事よりお祓いの事を・・・
1人で頭を整理しようとしていると、バイクが止まる。
「さぁ着いたよ」
そう言って健太君が振り返る。
「あっしまった。コンビニとか寄った方が良かった?」
「いえ、お構いなく」
混乱してしまい変な返しをしてしまう。
『もう着いてしまった。どうしよう。まずは、えっと』
まだ混乱しながら前を向くとそこには四角いちょっと大きめな家と、隣りに焼け焦げた3階建てのビルがあった。
「ここが健太君の家?」
「そうだよ。まぁ入ろうか」
そう言って促してくれるが、中々進めない。
それはさっきまで悩んでいたような事じゃなく、この並んで建つ2軒の建物から異様な雰囲気を感じ取ったからだ。
『でもせっかくここまで来たんだから上がらなきゃ失礼だし』
そう思い家に上がらせてもらう
「お邪魔します」
そう言って一礼をし健太君の部屋に案内してもらう。
「ちょっと待ってて飲み物取ってくるし。何がいい?」
「いきなり来ちゃったからそんないいよ。あっ、でもコップに水1杯入れて持って来てほしい」
「了解。じゃあ後は適当に持ってくるから」
そう言って健太君は下に降りて行った。
私から家に行こうって言い出した手前いきなり後ろから抱きつかれたりしたら断りづらいしどうしようかと思ってたけど大丈夫だった
まぁ健太君がいきなりそんな事してくるとも思えないけど。
「お待たせ。ストレートティでも良かった?」
「あっありがとう。いただくね」
持って来てくれた紅茶を1口飲み少し落ち着くと、やはり異様な雰囲気に気付く。
『私みたいなただ見えるだけの人にも感じるこの圧迫感てやばくない?』
「それでえっと、話ってどうした?」
健太君が困惑気味に聞いてくる。
「あっそうだね。あのいきなりごめんね。その何から言ったらいいか悩むし、少し長くなるかもしれないけど出来れば真剣に聞いてほしいの」
私は真剣さを伝える為に健太君をまっすぐ見て話した。
「うんわかった。ちょっと何なのか緊張するけど話して」
「単刀直入に言うね。私昔から霊が見えるの。
そして健太君の後ろに赤い服着た髪の長い女の人が見えるの。
それもほぼずっと」
健太君は完全に固まっている。
その表情は少し怯えているようにも思える。
「それマジだよね?今も見える?いつからいる?」
健太君は少し笑って言っているがそれは愛想笑いと言うよりかは、恐怖や不安を隠そうとする笑いだと思う。
「うん本当。4人で会った日もいたから私びっくりしてはじめ固まっちゃったもん。そして今日もいた。健太君の唇、噛んじゃったのも突然その女の霊が現れてびっくりしたからなの」
健太君は無言で固まっている。
たぶん情報を処理しきれてないんだろう。
「ごめんね。黙ってて」
そう言って健太君の手を握る。
「今もいる?」
健太君は怯えたように聞いてくる。
もう笑顔を作る余裕はないようだ。
私は首を振る。
「今は大丈夫。だけど健太君の家に入ってから重い空気は感じてる」
静寂が訪れ、重い雰囲気がのしかかる。
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