第17話 めぐり逢い
-美優-
新幹線から電車に乗り換え後は地元の駅を目指すだけ。
しかし2日間での九州弾丸ツアーの疲れと情報過多にようやくここまで来たという安心感が相まって眠りに落ちてしまった。
そして電車がガタンと揺れた事でハッと目が覚める。
『えっ、何処ここ?』
あまりに深い眠りに着いていたせいか自分が置かれた状況がすぐには理解出来ない。
『あっそうだ今電車か。えっ、今何処?』
慌てて確認しようとすると
『〇〇駅~乗り換えのお客様は~』
『ヤバい。降りなきゃ』
慌ててリュックを背負い電車から飛び降りる。
なんとか乗り過ごさずに済んだが健太君にLINEしようと思ってたのに出来てないしメイクも直してない。
とりあえずホームのベンチに座り健太君にLINEを送る。
『ようやく駅まで帰って来ました。
健太君はどうですか?
また教えてね』
そして鏡を取り出しチェックする。
『よし。何処にも寝てた跡付いてないよね?』
とりあえずこの後どうしたらいいか考えてるとLINEの通知音が鳴る。
『おかえり~
長旅お疲れ様でした。
俺もちょうど今駅前にいたから改札まで迎えに行ってもいい?』
まさかこんな良いタイミングで健太君も駅前にいたなんて。
どうしよう?とりあえず改札まで行って後は流れに任せようか。
そんな事を考えながら急いで改札まで歩いていくと既に改札の所まで健太君は来ていた。
「あっわざわざごめんね。ありがとう。まさかこんなに早く改札まで来てくれてるって思わなくて」
私は急いで駆け寄ってお礼を言った。
「あっいや、たまたまこの辺にいたからひょっとしたらこの時間帯の電車かもって思ってちょうど改札に向けて歩いていたんだ」
ちょっと困ったようにこちらに微笑んでくれる。
そして問題の女の霊は今ちょうど離れてくれてるのか、今の所見えない。
霊のタイプも色々あるらしいがどうやら四六時中くっ付いてるタイプじゃなさそうだ。
「ねぇ健太君。いきなりなんだけどこれ貰ってくれない?」
そう言って御守りを渡す。
「えっ、何?お土産?御守り?」
健太君は若干戸惑っているようだった。
そりゃそうだ。いきなりお土産がてら御守り買ってくるような女はそうはいない。
「ほら。健太君バイク乗ったりするから無事でありますようにって」
「あっそうなんだ。ありがとう。めっちゃ嬉しい」
良かった。喜んでくれてる。
怪しまれずに無事渡せたらいいなって思ってたのに喜んでもらえたんなら最高だ。
「出来れば離さず、ずっと持っててね」
「了解。じゃあ普段からいつも持ち歩いてる鍵と一緒に付けとこうかな」
そう言って健太君はバイクの鍵と一緒に付けてくれた。
そうして2人で歩いていると
「あっ健太君」
そう言って前から来た2人組が声をかけて来た。
「あっ佐和子・・・」
えっ?佐和子?・・・コイツ・・・・・・この子が佐和子・・・ちゃん?
『今健太君と私、結構楽しそうに歩いてたと思うんですけどそのタイミングで声かけて来ますかね?佐和子さんよ?』
私の中でどんどん負の感情が高まっていった。
「あっ健太君今日駅前でウロウロしてたのって待ち合わせしてたから?」
えっ?何?なんで健太君に馴れ馴れしく喋りかけてんの?私見えませんか?実は私の方が幽霊ですか?
そんな事を考えながら私は健太君の傍に寄り添って行く。
「おい。邪魔しちゃ悪いから行こうぜ」
隣にいた男の人がそう言って手を引っ張ると
「あぁそうだね。じゃあ楽しんでね。またね」
そう笑いながら去って行った。
お前・・・・・・貴女が来なければもっと普通に楽しんでましたけど。
「ご、ごめんね。変な奴らに絡まれちゃったね」
そう言って健太君は申し訳なさそうに謝ってきた。
「ううん。大丈夫だよ。楽しそうな人達だね」
そんな心にもない事を平気で言ってる私ってどうなんだろう?
そう思った時に気付いた。
健太君に寄り添って行って無意識のうちに腕掴んじゃってる。
どうしよう。凄く大胆な行動になってる。
別に手を繋いでドキドキするような年でもないけど、まだちゃんとデートもしてないのに私から腕組みに行っちゃって、健太君はどう思ってるのかな?
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