第7章 MA推進部部長
第80話 鈴木部長
4月28日の月曜日。
明日からGWに入るので今日が今月最終日、になるはず。
それは、鈴木部長が決裁を出してくれるか否かにかかっている。
昨日、山田はニコニコしながらこう言っていた。
『もしNGだったら……GW明けにすぐにリベンジできるように、GW中に宿題をこなさないといけないね』
(土曜日も遅くまでがんばったんだ。準備は万端。いざ、勝負!)
そうして、昼休みが明けると、山田と真奈美は部長室のドアをノックした。
「鈴木部長、先日頭出ししておりました、宮津精密への出資の件です。ノンバインディングの意向表明を出してDDプロセスに入りたいと思いますので、ご説明とご決裁を伺いにまいりました」
山田は丁寧に切り出した。
茶色の髪、すらっとした体系、赤い眼鏡の奥の鋭いまなざしが陰りを見せた。
「ああ、前に聞いたやつだね。あまり良いプロジェクトとは思えないけど?大きな案件が進んでいるところだからリソースもかけている場合じゃないと思うけど」
(……いきなり超まずい雰囲気だ。この人、話も聞く前から……)
真奈美は、自分の上司とはいえこの態度にさすがにむっとしたが、山田は飄々と話を続けた。
「はい。大きなリソースをかけるつもりはありませんが、事業本部としても本件進めたいとのことです」
「業績不振のコンシューマだよね。出資なんか検討している場合じゃないような気もするけど。まあいいや。まずは聞こうか」
「ありがとうございます。では、酒井さんから説明をさせていただきます」
山田が鈴木の好戦的な挑発をすべてさらっと受け流しているのをみて、真奈美は落ち着きを取り戻すことができたようだ。
(……大丈夫、緊張はしていない)
「鈴木部長、それでは私から説明を始めさせていただきます。まずは会社の概要から簡単にご説明申し上げます……」
こうして、真奈美にとって、自分のボスに対する初めてのプレゼンが始まった。
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