第72話 意向表明ドラフト

 真奈美は事業本部の企画部長である佐々木と連絡を取り、なんとか午後1時にテレビ会議の予定を確保した。


 といっても、午後1時までもう30分もない。


「あーあ、またお昼サンドイッチか」


 オフィスに戻る途中で売店によって買ったサンドイッチ。これをもぐもぐたべながらオフィスに戻り、すぐさまTV会議室に入ると、システムを立ち上げた。


 すぐに、山田も部屋の合流し、TVの向こう側では片岡本部長も会議室に合流したようだった。


「片岡本部長、急遽の会議ですみません。来週月曜日にこれを社内決裁取って宮津精密さんに開示できるように、この場で未決定事項を決めさせていただきたいと考えております」

「いやいや、大丈夫だ。このプロジェクトはうちの本部の中でもトッププライオリティだからいつでも最優先に対応するつもりだよ」


 そういってガハハと笑う。いつもの片岡だった。


「ありがとうございます。それでは早速ですが、酒井さん、説明宜しく」


(え、え、いきなり私からですか?)


 全く心が落ち着く暇もないが、やるだけやってやる。


 真奈美はもはや驚くこともなく、説明を始めた。


「まだ議論できていないところが多いので、鉤括弧[ ]がついていることろは、特に重点的に議論をさせてください」


 そう注釈を入れたあと、意向表明書の内容説明を始めた。


 ✔︎会社概要

 ✔︎取引形態は『第三者割当増資』

 ✔︎出資の目的は貴社との協業、新規事業創出、両社価値向上

 ✔︎想定する出資価額は[10]億円

 ✔︎発行株式は[10]%相当。

 ✔︎計算の根拠は[貴社提出事業計画]

 ✔︎役員派遣については[1名役員派遣]

 ✔︎DDは[財務、税務、法務、ビジネス]

 ✔︎法的拘束力は基本的には拘束力なし

 ✔︎提案内容はDDによって変わりうる

 ✔︎そして、スケジュール、有効期限、秘密保持、その他の事項……


 片岡も山田も一旦最後まで説明を聞いていた。


「いかがでしょうか。かなりたくさん相談したところがございますので、最初から順に議論させて頂きたいと思いますがよろしいでしょうか」

「うん、短時間で準備してくれてありがとう」


 そうして、片岡と山田、真奈美を交えた議論が始まった。

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