第35話 笑顔のプレッシャー
大津証券とのWeb会議が終わると、真奈美はスピーカーセットを片付けながら山田に質問した。
「最初の紹介でカバレッジとかエグゼキューションとか言っていたのは何のことですか?」
「ああ、あれは投資銀行の部門の名称だよ。特に外資系でよく使われるんだけどね。営業部門をカバレッジ、M&A実行部門をエグゼキューションということが多いんだ」
「そうなんですね。ありがとうございます」
(……営業部、推進部でいいじゃん。うちみたいに。日本企業なんだから)
やはり今後も初めて聞く横文字がまだまだ出てきそうで、不安になった。
「今日の話でだいたい宮津精工さんのお考えはわかったね。おそらくビジネス協業がまとまらないとお互い出資という話にはならないということだな」
「そうですね。でも、その方が事業本部のやる気も出てくると思いますよ」
「うん、そこに期待だな」
そういうと、山田は真奈美の目をしっかり見つめて言った。
「つまりは、酒井さんの事業本部へのプレゼンが非常に重要ということだと思うから、しっかり頼むよ」
山田は酒井の肩をたたくと、はははっ、と笑いながら会議室を出ていった。
(もぅー、ただでさえプレッシャー感じているのに……)
真奈美は後片付けを終えると、自分の席に戻る前に、小巻に今日の顛末を簡単にチャットした。
小巻からはすぐに返事が返ってきた。
『あちゃー、やっぱり山田チーフはドSね』
『でしょー。笑顔で追い打ちかけないでほしいわよー』
『よし、今晩飲みに行こう。慰めてあげるよ』
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