第33話 FAへの質疑応答

 山田の質問が始まった。


「資本業務提携が希望とのことですが、業務提携の面で弊社への期待や要望事項はありますでしょうか」


 谷口の回答によると、新しい精密加工技術の開発にはユーザー企業の知見が必要なので、ユーザー候補の白馬機工との共同開発に期待しているとのことであった。


 そのあとも、山田からポンポンと質問が飛び出ていき、谷口が軽快に回答していった。


 真奈美はそれを眺めながら、なんかかっこいいなあと感心していると、


「酒井さん、事業提携について、ほかに質問ある?」

「え、ええっと、いえ、ここまでは大丈夫です」


 いきなりふられてしどろもどろになってしまった。


(そうだった。山田チーフはいきなりノールックパス送ってくるから……気を抜いちゃダメだった)


 そして、山田の質問はディールプロセスに関するものへと移っていった。


「そうすると、弊社以外にも提案されているのでしょうか」

「いえ、今のところ御社のみですが、ご興味ないということになれば、他のメーカーとの協議に入ろうかと考えております」

「なるほど、弊社の事業を評価いただいているということですね。ありがとうございます」

「おっしゃる通りです」


 つまり相対あいたいプロセスを想定しているということだった。

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