第29話 ディールストラクチャ
「最後に、ディールストラクチャについて説明しておこうか」
「……取引の構造について、ですね」
「うん、直訳するとそうだね。M&Aの場合、ディールストラクチャは取引の手順、手法のことを指すんだよ」
山田は該当するページをプロジェクターに写した。
「今回は宮津精工の資金調達。つまり、宮津精工からうちに新しい株式を発行するから現金を出資してね、という内容だ」
「いわゆる増資ですね」
「そう。増資の中でも、新株を特定の法人に割り当てる手法を、第三者割当増資というんだ」
「なるほど。他にもあるんですか?」
「うん。例えば、上場会社が市場の投資家全体から追加の増資を募ることはPO、つまりパブリックオファリングと呼ばれるんだ。増資の場合と既存株売り出しの場合と両方あるけどね」
「そうなんですね」
「あとは、非上場企業がはじめて上場するときをなんというか知っている?」
「はい。IPOですよね」
真奈美は元気に答えた。
「もちろん意味も知っているよね?」
山田はニヤニヤと真奈美を見る。
(はっ!しまった。罠にかかっちゃった……)
「あ、え、えーっと……」
「あれ?知らないの?」
(……イジワル)
「ははは。まあ、あまり馴染みはないよね。IPOとはイニシャル・パブリック・オファリング。最初に上場して市場から資金を集めることだよ。これもさっき言ったPOの一種なんだよ」
真奈美は恥ずかしくなってうつむいた。
「話を戻すと、今回のディールストラクチャは第三者割当増資。目標金額は10億円と書いてある」
「10億円。それで私たちはどのくらいの出資比率の株主になるんですか?」
「それは、これからバリュエーション、つまり会社の価値がどの程度あるのかを試算してからじゃないと分からない。ここはまた意向表明のときに説明するよ」
山田はそういうと、さらに話を進めていった。
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