第21話 会社概要

 ふたりは気を取り直して、IMの本章のレビューを始めた。


「IMは通常、とにもかくにも会社情報の説明から始まるんだ」


 プロジェクターは宮津精工の概要(住所や代表者・役員など)・沿革・株主構成などを映し出している。


「すでにHPで概ねの情報を得ているとはいえ、IMに何が記載されているかを読むことで相手の意図を探ることもできるからしっかりと読むように」

「相手の意図ですか?」

「そう。例えば、沿革のところを見てごらん」


 そこには、HPで記載の沿革の抜粋が載っている。


「……大手企業との提携の話が多いですね」

「そういうこと。要は、売り手としてアピールしたいところを惜しげもなくアピールしてきているということなんだ。つまりは、彼らが大手と提携できる実力を持っていることを認めてほしいというメッセージなんだ」


(なるほど……)


 真奈美は感心した。


「役員をみてごらん。略歴も書いてある」

「本当ですね。社長さんは代表取締役の森社長……創業者のご子息ですね」

「うん。まだ若いけど、職人気質の技術会社を継いで、これから事業を伸ばそうということなんだろう」


 山田は少し難しい顔をした。


「創業家経営が続いているだろうから、外部からの介入には警戒しているだろうな。経営への関与を強くにじませない方がよさそうだ」


 そして、山田は取締役の一人を指さした。


「この人、岡野取締役。銀行出身者だから、おそらくは今回の資金調達の責任を担っているんだと思う。とまあ、こんな感じで、相手の重要人物の人となりもできる限り調べておくといいね」



(なるほど……)


 真奈美は一言も口をはさめず、ただ感心していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る