第3話 その会社知ってます?

「でも、なんでもう少し詳しい情報を載せてくれないんですか?」

「それはね……」


 山田によると、売り手は本気の相手以外には自分たちの売り出しの動きを教えたくないとか、うわさが出ちゃうと従業員のモチベーションとかにも影響するなどが理由とのことだった。


「そっか、確かに。

 でももう少し詳しい情報をもらわないと検討しづらいですよね」

「その通り。だから、もしこの会社に興味があった場合は、

 NDAを締結して、より詳しい情報をもらうんだよ」

「NDA?秘密保持契約ですね?」

「そういうこと」


 山田は次のページを映した。

 そこには、投資ハイライトという項目があった。売り手が想定するM&Aの内容や、この会社に投資するとこんないいことがあるんですよ、という内容だ。


「この会社は新しい加工技術の開発のために資金調達を募っている。

 つまり、マイノリティ出資してほしいということだね」

「マイノリティということは、50%未満ということですよね。

 過半数以上の買収でなくてもM&Aと言うんですね?」

「うん、もちろんM&Aは合併と買収という意味だけど、

 広い意味では資本を絡めた株式譲渡や事業譲渡、出資もM&Aという括りで、

 うちの部で対応しているんだよ」


 山田は資料に話を戻した。


「事業本部の企画部に聞いてみると、この会社はもともと技術力には定評があるので、出資して強い関係を築くことができるのであれば面白いから、一度真剣に検討したいという回答がきたんだ」


 真奈美は早速混乱し始めた。


(あれ?事業本部の人たちはなんで資料に記載されていないことまで知っているんだろう?)


「……ちょっと待ってください。まだNDA結んでいないんですよね?なのに、もしかしてこの会社がどこか、ご存じなんですか?」

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