第384話◆反省しろ!!!
ドリーの放った衝撃波で岩場がちょこっと崩れた。
そこにカリュオンが突っ込んで、棍棒で思いっきりその岩場を殴って更に崩壊した。
そしてアベルが岩場を狙って土魔法で地震を起こし、完 全 崩 壊 ! !
岩場でくつろいでいたヤエル君達、怒りのウェイクアップ。
山羊って少々足場悪い場所でもヒョイヒョイ移動するし、ヤエルなんてBランクの魔物だから、足場を崩したくらいだとほとんどダメージないんだよなー。
十五匹程度だろうか、住み処を壊され激おこモードのヤエル君達が、体から赤黒いオーラを上げながら崩れた岩場の上から駆け下りてきた。
あとは地獄絵図。
一箇所に纏めて倒した方が効率がいい? 回収が楽? 岩山に登るのが面倒くさかった?
そうだね! 岩場を崩すのが効率的だね!!
んなわけあるか!!
わかる、わかるぞ!! お前ら非常識君だろ!!!!
俺は逃げるぞ!!
この騒動が終わるまで、安全な場所で薬草を集めて時間を潰そう。
ゴリラ達と離れた場所にコソコソと移動し初めた時、空中から間の抜けた鳴き声が聞こえてきた。
「ベェ~~~~」
晴れ時々羊の次は山羊か!?
どうせカリュオンだな。
空を舞う山羊、その向こうにはビヨンビヨンと伸びるヤエルの角を盾で防ぎながら、盾から漏れたのは体で受け止めているバケツの姿が見えた。
バケツにたかるヤエルに攻撃しながらも、自分もヤエルの攻撃を食らっているドリー。
どう見てもクソ痛そうなのだが、ドリーは負傷時ほど強くなるとかいうドMギフトの持ち主だったな!!
アベルはその二人を盾に後ろの方に下がっているが、地震魔法なんかぶつけたからもちろんアベルを狙うヤエルもいるため、アベルを追尾するように角を伸ばす奴も見えた。
アベルが転移であっちこっち避けるから、ヤエルの角がビュンビュン飛び交っているぞぉ?
そして、その三人にせっせと回復魔法と補助魔法を飛ばしているリヴィダスだが、それに気付いた賢いヤエルがリヴィダスに向かって角を伸ばしている。
回復ヘイトというやつだ。時々ヒーラーを積極的に狙う魔物もいる。
まさにカオス空間、あそこには絶対近寄らない。
こちらに飛んで来たヤエルを処理したら撤退だー!! あばよおおおおおおおお!!!
「あっち飽きたから、来ちゃった」
とどめを刺したヤエルを収納に投げ込んで、安全な場所に移動しようとクルリと向きを変えたら、突然目の前にアベルが転移してきた。
来ちゃった、じゃねえええええええ!!!
飽きたじゃなくて、ヤエルの角攻撃が面倒くさくなって逃げて来たのだろ!?
ほら、アベルを狙っていたヤエルがこちらに来ているのが見えるぞ!!
やめろ! 俺を巻き込むな!!
「来ちゃったじゃねえ!! なするならカリュオンにしろ!!」
「だって、カリュオンとドリーのとこには近付きたくないし」
わかるわ、あそこもう何がなんだかわからない山羊団子が出来上がっている。
とりあえず、こちらに来ているヤエルを片付け……。
「うおっ!!」
まだかなり距離があるのに角がビヨーンと伸びてきたので慌ててそれを避ける。
おのれ、アベルのやつ空中に逃げて行きやがった!!
「ちょっとアベル!! どこまで逃げてるの!!」
やばいリヴィダスが怒っている声が聞こえる。どう見ても回復魔法範囲外。
俺は悪くないのでアベルを怒ってやって下さい。
「まったく、格下の相手だからって舐めてると怪我するぞ」
空中に逃げたアベルを狙って首を上に向けビヨンビヨンと角を伸ばすヤエルが三匹。
身体強化を発動し剣を抜いていっきにヤエルに詰めより、その首を連続で刎ねた。
注意がアベルの方に向いており、角も伸ばしっぱなしなので本体は隙だらけである。
「やー、助かったよ、さっすがグラン。三匹が連続して角を伸ばしてくるから大きな魔法が使えないし、すぐに発動できる弱い魔法だと伸ばしてない角で弾かれるしで、面倒くさかったんだよね」
なんでもかんでも纏め狩りをしようとするからだ。
あとはドリーとカリュオンのとこの山羊団子か。
さすがに数が多すぎて、防御に手を取られて切り返し苦労をしているようだ。
纏め狩りは計画的にだな。
あの団子に爆弾ポーションを投げ込んだら楽しそうだなぁ。
いやいや、素材がダメになるな。
ヤエルの素材ならまぁいいか? いや、もったいないか?
殺しきれなかった時に俺の方に来そうだし、やっぱないな。
「グランのおかげで俺を狙っていたヤエルがいなくなったからあとは任せていいよ」
ヒュッとアベルが山羊団子の方へと転移で戻って行く。
ああ、うん、そうだよな、いくら面白そうでも爆弾を投げるのはよくないよな。
あとはアベルに任せよう。
うむ、平和になったしプラクス採取に戻るとしよう。山羊はゴリラが片付ける。
しばらくしてドーンという轟音が聞こえて来たのでそちらを見ると、カリュオンの盾から光の帯が発射されているのが見えた。
そりゃ、あれだけ袋叩きになれば盾からレーザーくらい出るわな。
それでもまだ生き残っているヤエルの上に氷の塊が落ちているのが見えた。
素材大丈夫……じゃなさそうだなぁ。自由時間だから俺には関係ないけれど。
あー、ダメ押しのドリーウェーブも見えるな……。
ヤエルは片付きそうだが、最後にリヴィダスの雷が落ちそうだ。
「カリュオンがいたらいけると思ったけど、やっぱヤエルは数が多いと面倒くさいね」
「角が片方引っ込んだと思ったらすぐ次がくるから、それの数が多くなると身動きが取れなくなるからなぁ。引我応砲が溜まるまで防御しかできなかったよ。アイツらBだっけ?」
引我応砲とはあの盾光線――カリュオンのユニークスキルの正式名称である。
敵の攻撃を受け止めそのエネルギーを受け止めて蓄積、最終的に聖属性の極太光線として撃ち出すなんともインチキくさい技である。
「うむ、さすがBといったところか、角の攻撃は貫通力があるし、纏めて狩ろうと思うとなかなか厄介だな。纏めて効率よく狩る方法はないだろうか?」
群一つ全部連れてくるというか、住み処を崩壊させる規模でやらなければ、もう少し楽だったんじゃないかな!?
というか最後は吹き飛ばしていたのだから、素材も一緒に吹き飛んでいそうだし無理に纏め狩りするより、少数ずつ狩った方が儲かるのじゃないかな。
セーフティーエリア前の自由時間で少し大騒ぎになったが、その処理が終わってセーフティーエリアへと到着し野営の準備を始めた。
ドリー達はテントを組み立てながら、先ほどのヤエル戦の反省会をしている。
今回はわりとマジメに反省しろ!!
「ヤエルは掻き集めすぎないこと! ヤエルに限った事じゃないけど、捌ききれる範囲でほどほどにしておくのよ?」
三人はすでにセーフティーエリアに到着後、即リヴィダスのお説教済みだが、この調子だともう一回くらいお説教された方がよさそうだな?
今回のドリー達は弁護のしようがないな。
「お、おう、すまなかった。つい久しぶりのダンジョンで興が乗りすぎてしまった」
いつもならお説教する側のドリーだが、時々今回みたく暴走する時もある。
「さっきのヤエルは酷かったわね。あれに巻き込まれるのはちょっと遠慮したい状況だったし、思わず遠くまで移動しちゃったわ」
好戦的なシルエットから見てもあの山羊団子は触りたくなかったらしい。
「ヤエルなー、角は解毒ハイポーションになるんだよなぁ」
以前にもヤエル種の角は弄ったことがあるのだが、その時は調合スキルが足りなくて大失敗してしまった。
調合スキルも上がってきたし上手く取り扱えるようになっているだろうか?
「そうそう、物によってはエクストラまでいけるわね。一階層で手に入れたヤエルの角ならいいところまでいけそう。あら、グラン、その鍋そろそろいいんじゃない?」
「お、了解。プラクスだけザルに上げて、湯はそのまま冷まして……その前に味見――ホントだ甘いだけで苦みがなくなった」
ドリー達がテントを組み立てているので、俺は夕飯の準備だ。
その夕飯の準備をしながら、先ほど摘んで来たプラクスを試しに少しだけ煮ていた。
水洗いしたプラクスの葉をさっとお湯で茹で、茶漉しで保存用の容器に移す。残った葉っぱは後日乾燥させてお茶っ葉にするので、収納の中にポイ。
容器に移した方の茹で汁は、ほんのりと黄緑に近い黄色い色がついている。
そしてその味は思った以上に甘いが、あまりしつこさのない甘さだ。いきなり料理に使うのは怖いからとりあえずお茶に入れて試すところからだな。
ここからもう少し煮詰めたら甘さが凝縮されるのだろうか? この状態まではすぐにできるので試してみるしかないな。
「ところで今日の夕食は羊?」
「羊は捌くとこからだから今日は無理だな。見張り番の間に処理して明日の夜に食べられるようにしておくよ」
そういえばシルエットも肉好きだったな。
しかし、羊肉の準備ができていないので、今日は持ち込んだ食材だ。
さぁて、俺の仕事をするかなー。
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