ステージは真綿色

ステージは真綿色

デリヘル、わかる？

そうそう、女の子を家とかホテルに呼んでエッチなサービスしてもらうアレな。

そのデリでさ。デリヘル嬢の話を聞くのが好きなんだよ、俺。

面白い話って急に言われても難しいだろうから聞く話は決まってんだ。困った客の話とか、印象に残った客をしてくれって言うの。これなら必ず何かしらあるから。

多いのはおじいちゃんのお客さんの話だね。これはもうみんな言う。鉄板ネタ。ただそれだけに目新しい話は無いんだよね。イったか死んだかわかんないとかそんなの。

だから変わったプレイを要求してくる若い客の話の方が思いがけない話が聞けていいんだ。

イメージプレイ、わかる？制服着てもらうとか、自分は患者やるから君は看護師になってとか。オトナのごっこ遊びだな。

そのイメプレでさ、アイドルとプロデューサーの関係で遊びたいって客がいたんだって。これがなかなか要求が厳しくてね。

普通は女の子と会ってあれこれ手続きしてちょっと話して、それじゃシャワーでも浴びましょうかってなるんだけど、それはやめてくれ、と。それはデリヘル嬢と客のやりとりであってアイドルとプロデューサーのそれではない、って。

だから、彼はホテルで待ってはいるけど彼にとってそこはホテルじゃないんだ。そこはバックステージであって、扉を開けて入って来るのはこれからステージに向かうアイドルなの。

で、ステージというかベッドルームに向かうアイドルを見送って、舞台袖でステージが終わるのを待って…うん？歌うよ？ 1曲歌ってからなんだって。振りつきで。大変だよ、だからその子以外にその客につける子いなかったって。客の方もその子しか指名しなかったそうだから問題無いんだろうけどね。それで、ステージが終わったアイドルをお疲れ様って抱きしめて、やっとプレイが始まるわけよ。

そのアイドルプレイが段々本格的になってくんだって。イメクラじゃないんだから断っても良かったんだけど、女の子が「まぁ、いいですよ」って受けちゃうからお店の方も「じゃ、いいか」って続けちゃった。

そのお店さ、外で待ち合わせして一緒にホテルに行くサービスもあったからさ。それを利用して公園とかで待ち合わせて、野外ライブをやってホテルに行くようになったんだって。

数週間後にはその野外ライブの真似事にサクラを雇ってファンの前でライブをやるようになって、そのうち本当にファンがついたんでその前で歌うようになって、いつの間にかオリジナル曲の持ち歌もできててそれを歌って CD も作って、ってどんどんエスカレートしてくのよ。

すごいよな、これデリヘルのプレイの一部なんだよ？

この話を聞いたのが何年前だったかなぁ。そのうち女の子もそのお店やめちゃったからさ、俺もなんとなく忘れてたんだよね。

それがさ、最近久々にその子を見たの。CMで。なんか全国ツアーやるって言っててビックリしちゃった。えっとね、待って、今検索するから。あ、この子この子。

あ、知ってる？有名なんだ？そうか、最近の歌手とか疎くてさ。へぇ、あの子がねぇ。

そういや CM 見ててさ、全国ツアーの。思ったんだけどさ、これはまだプレイの一環なのかな？

今でも舞台袖ではその客の男が見守ってて、女の子もプロのデリヘル嬢として歌って踊って、アイドルの顔で男の所に戻るのかな？

だとしたら、ファンが見てるステージはいったい、何なんだろうな。