第73話

     Mate


 その日、オレは伊丹家へ向かう。彼女の家に上がると、そこには志倉がいて「あれ? 今日は君と?」

「いいえ、ちがうけど……来ちゃった♥」

「誰に盗撮を命じられたか、話す気になったのか? そうじゃないと、また滅茶苦茶にするぞ」

「えぇ~……」口ではそういって、怒ったように唇を尖らすけれど、うれしそうな顔をしている。

「友達になったんです。それで、今日来るって話をしたら、行きたいって……」

 伊丹がそういうのは、珍しいことだった。小学校低学年のころ、いじめをうけたことで同級生とはほとんど交流がない、と自分でいうぐらいだからだ。

 そこに、訪問客があった。

「あら? 先客?」

 入ってきたのは野崎 奏美と、葛西 彩陽の二人だった。

「私たち、JKになったのよ。ほら、制服がちがうでしょ?」

 確かに、私立の女子高の制服なので、名のあるデザイナーに頼んだのだろう。可愛らしいリボンのついた、色鮮やかな制服だ。でも……。

「制服を見せにきたわけじゃないだろ?」

 そう、むしろ制服を脱ぎに来たはずだった。


「彼氏のエッチが下手すぎて……。もうボランティアは疲れたわ」野崎はそういってため息をつく。

「ボランティアなんだ……?」

「自分勝手に私のことを散々にした挙句、自分だけ達して終わり……。ボランティアじゃなければ何……って感じ」

「あの、『下手』といって落ち込ませた彼氏?」

「いつの話……? あぁ、三人前の彼ね」

 まだ一年も前のことじゃないのだけれど……。

「カナは面食いで、彼氏もとっかえひっかえなんだよねぇ。顔だけで選ぶから、エッチが下手なんじゃない?」

「エッチしてから彼氏にするわけじゃないから。顔だけで選ぶでしょ、ふつう……。問題は、私が好きになる男の傾向が、エッチが下手っていう……」

「自分勝手で、相手のことを考えないタイプを好きになるんだろ? そこは自業自得じゃないか?」

 オレがそういうと、葛西もくすくす笑いながら「カナは引っ張っていってくれる男の人が好きなんだよね」

 野崎もため息をつきながら「確かにそうだけど、エッチのときは私のこと、引っ張っていくんじゃなくて、おいて行っちゃうのよね……」


「私はこの前、ひどいエッチのされ方をしたから、今度こそちゃんとした形でイカせてもらおうと思って」

 葛西がそういうと、「ひどいエッチって?」と、これは志倉が尋ねた。

「私は初めてだったのに、トイレで立ちのまま……だったんだよ」

 その通りで、野崎に誘われていったマンションで、複数の女の子の相手をした。その中で、彼女は処女――。そのせいかどうか、彼女はトイレに逃げ隠れていたのだ。このままではエッチに興味があるのに、中々できない、こじらせていくだけ……ということで、その場でエッチをした……という顛末だ。

「私もひどいエッチをされたんですよ。初めてなのに、まるで脅すようなことを言われ、『さもないと犯すぞ』と、何度も……、何度も……」

 ウソ泣きをしてみせるが、オレもため息をつきつつ「志倉のケースはちがうから。むしろ最後は、もっと、もっととおねだりしていなかったか?」

「ち、ちが……。もう!」

「大体、無理やりしていたら、またここには来ないだろ?」

「友達の家に遊びに来たんだもん! 別に、エッチをしに来たわけじゃないもん!」

「じゃあ、志倉とはしなくていいんだね?」

「いや~、待って、待って。私もする! 絶対するからね」

 結局、エッチ好きの子が四人、集まっただけのようだった。


 野崎は胸が小さめの、スレンダーなタイプで、エッチもどちらかといえば受動的。これは付き合ってきた彼氏にも問題があるのだろう。初めてここに訪れたときも、エッチが下手な彼氏に愛想をつかせて……だったが、エッチも引っ張っていって欲しいタイプなのだ。

 一方で、こじらせ処女だった葛西は、エッチにも夢見るタイプ。トイレでした後、もちろん部屋にもどってもしたけれど、髪にさわって……、口から胸へと舌を這わせて……など、要求が多い。映画かエッチビデオなどでみたシーンを、とにかく再現したいのだ。

 志倉は最初に滅茶苦茶をしたせいか、なんでもオールマイティに受け入れる一方、野崎とはまたちがった意味で、受け身でいることが多い。簡単にいうと、野崎の場合は男にさせてあげている感じだけれど、志倉はしてもらうのを待つ、という感じかもしれない。

 伊丹は……というと、その逆だ。彼女とは多数の女の子と一緒にすることが多いけれど、順番とかにこだわりがない一方、空いているとさっと跨ってきて、自分で動いていくタイプだ。隙あらば……と狙っているようで、女の子同士でも抵抗なくキスをしたり、あそこをいじったりできる。エッチが好き……というより、オレとするのが好きで、他人にあまり興味がないように、他の女の子とキスしたり、胸を揉んだりしても、特に何も感じていない、といった様子にみえる。


「やっぱり、アナタとのエッチはいいわ。こっちがイクまで、ちゃんと待っていてくれるもの……」

 野崎は達した後、そう感想を漏らすけれど、待つというより、それまでちゃんと動く、ということだろう。性感帯をさぐり、相手のどこがどう感じやすいのか? を考えて、イカすことだけを考える。それは自分でイクことがないので、できる芸当かもしれなかった。

「今度は後ろから……して♥」

 もう何度か絶頂を迎えたはずの葛西が、そうおねだりをしてくる。胸は野崎より大きめだけれど、まだあそこは未成熟であり、これは繰り返しすることで、また色々な体験をして、鍛えていくものだ。志倉を隣に寝かせ、右手で彼女の股間に指を這わせつつ、左隣には伊丹を立たせる形で、キスをしながら胸を揉む。それで後ろから、葛西にはめた。

 一遍にしないと、時間も限られるのだ。

 伊丹の家とて、つかえるのは母親が帰ってくるまでだし、オレも帰って夕飯をつくらないといけないのだ。四人……というのは、ないことはないけれど、時間制約がある中で一度に相手をするには多すぎる。


「あれ? 志倉は帰らないのか?」

 野崎と葛西はかなり満足して、先に伊丹の家をでていった。オレが帰ろうとしたときも、志倉に帰るそぶりがない。

「今日、ここにお泊りするから」

「なんだ、本当に友達になったんだ?」

「友達だよ。紗文ってとっつきにくい印象があったけど、一緒にセックスをしたからじゃないけど、親しみを持ったっていうか……」

「下に染み? それはまだ濡れているときにパンツを履くから……」

「ち、ちがうから!」

「その友達を盗撮ししようとしたんだぞ。まだ、誰に命じられたか、いう気になれないのか?」

 そういうと、志倉は横をむいた。「それは……いえない。でも、私のことは紗文もわかってくれたから。お互い、色々とあるのよ」

 伊丹にできた、初めてかもしれない友達なのだ。オレも「伊丹と、仲良くしてやってくれよ……」

「仲良くするよ。だって、私たち同じ……仲間だから」

 伊丹も孤立していたのだろうか? でも、やっと伊丹も小学生らしいことをはじめた……六年生にして、こうして友達もできたのだ。それを喜ぶのと同時に、仲間という言葉がひっかかっていた。




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