第63話
Hand Work
長谷部 春花――。彼女は和の体型で、お尻が大きめだった印象が強い。もっとも、多少女性らしさを増したとはいえ、筋肉質で男性っぽい体をした羽沢との差でもあり、感じやすい体質だったけれど、それでも一度だけの関係で留めたほどの、精神的な強さももっていた。
直接会うと、色々と問題もあるので、羽沢の部屋からネットでつないで、話をすることにした。
「申し訳ございません。お姉様にまで心配をかけて……」
長谷部は消え入りそうな声と、少しほっそりして見えることで、元気がなさそうに見えた。
「私のことなど、気にする必要はございません。何があったのですか?」
「教室で、大人かそうじゃないか、と口論になり、私はつい『体験済み』と口走ってしまったのです。
それで、周りの方から『気持ち悪い』『汚らわしい』と言われて……」
まだ小学生の少女たちの間では、性的なことを毛嫌いする風潮も強い。お嬢様学校として、清純や清廉を重視するあまり、そうした方向にすすんでしまった、ということだろう。
「先生方には……」
「今のところまだ……。ただ、あくまで冗談や嘘をついた、口走ったと思われているだけで、耳にはとどいているかもしれません」
学校側としても、その噂があまりに拡散すると、さすがに無視もしていられなくなるだろう。それは学校の風紀、風潮にも関わってくるからだ。
そのとき、家では全裸でいる、大学生の姉が羽沢のことを呼びに来て、彼女が席を外す。それでオレから尋ねてみることにした。
「どうして、大人かどうかでケンカを?」
「お姉様には言いづらかったのですが、私が……お姉様のシスターをしていたことが、周りの人には気に入らなかったのです。元々、下級生の中で、羽沢お姉様はとても人気がありました。私のようなものがシスターでいることが、妬み、嫉み、恨みとなっていたのです。
これまでは目立って嫌がらせを受けてきませんでしたが、お姉様が中等部に上がり、シスターの関係が解消されると、一気に噴出して……。
私のようなものが、お姉様のシスターだったことはおかしい。そう言われ、売り言葉に買い言葉、私はもう大人で、お姉様にふさわしい……と」
それはヤバい反論だ。むしろ羽沢も体験済み……とすら勘ぐられる。むしろそちらが問題にされなかったのは、羽沢の人気、彼女を美化してしまう、下級生たちの深層心理だったのかもしれない。
「それを聞いていたのは多かった?」
「口論をしていたのは赤池さんと、だけですが、教室には半数近くのクラスメイトがいました」
かなり厄介なことになっている。いくら興奮して口走ったとはいえ、大半が聞いたのなら、それを聞き間違いとして否定することもできない。一方で、事実と認定されるようなことがあれば、退学させられる恐れもあった。下手な反論は首を絞めることになりかねない。
そのとき、羽沢が部屋にもどってきた。
「オレが考え付いた、唯一の解決策を話そう」そういって、オレは語りだした。
「まず、羽沢が今でも彼女をシスターとしてみとめること。それが慣例を破ることになっても、そう宣言をすれば、直接的な攻撃は少なくなるだろう。キミが処女か、非処女かに関わらず、羽沢が妹分とみとめているのだからね。
でもそれは、羽沢にとってもリスクを負うことでもある。キミも非処女だと勘繰られるかもしれないし、その結果として、周りがどう判断するかは分からない。
長谷部は、反論はするな。下手な反論は、逆に火に油をそそぐだけだ。これからはどんなことがあっても受け流せ。
ただそうすると、恐らくクラスメイトに友達はできなくなるだろう。本当は、説得して納得してもらえるのが一番だけど、それは真実を語れば、退学すらあるものだから、嘘をつきつづけないといけない。それを選ぶか、それとも学校では一人だけれど、羽沢のシスターでいつづけるために沈黙を守り続けるか……だ」
二人に異論のあろうはずもなかった。その問題を解決するために、こうして集まっている。互いにそうすることがベストなら、そうする決断は早かった。
「中等部になっても、シスターをもち続けるなんて初めてのことでしょうけれど、私はやり遂げてみせますわ」
父親ゆずりの筋肉質な体に、父親譲りの正義感をあわせもつ。羽沢が下級生から人気が高い、というのもよく分かる。背も高く、最初に会ったときも宝塚の男役かと思ったけれど、まさに彼女は女の子たちから羨望のまなざしを浴びる、スターのような振る舞いであった。
長谷部はモニタの向こうで泣いていた。「よろしくお願いします」と呟くのが精いっぱいだった。自分で蒔いた種だけれど、それも姉である羽沢と同じ体験をする、という決断をした結果である。羽沢も、自分がしたことで、長谷部がそうした行為をしたことを自覚するからこそ、手を差し伸べる。実の姉と妹ではないけれど、この二人の絆は強かった。
その憧れの先輩は今、ベッドの上に制服のまま横たわり、オレに片足をもちあげられ、スカートをはだけ、パンツから何から丸出しにしている。オレはそのもち上げた右足を肩に乗せて、その内腿を両手で優しく愛撫する。
「ん~……、んん~……」
あまりに気持ちよく、羽沢もそう声が漏れるけれど、自室ではエッチをしたくないという彼女のため、互いに服を着たままだ。最初のころこそ、内腿しか感じるところがなく、そこだけを責めていたけれど、今や少しずつその範囲が広がっていて、内腿からふともも全体に手をすすめると、その敏感さが伝播したように、それ以外の箇所でも歓喜の声を上げる。
パンツなどさわらずとも、彼女のそこは濡れているのが、見た目でも分かる。彼女も少しずつだけれど、女の子っぽくなってきた。未だに足はもちもち、柔らかいという感じではなく、筋張ったアスリートのようだけれど、それは彼女があることをしているからだ。
「バレエはまだ続けているのかい?」
足を責められながらなので、一瞬「へぇ?」と、呆けたような声をだした羽沢だったけれど
「まだ……続ける……ことに……しまし……。あぁん♥」
イッたようなので、そこで手の動きを止める。彼女は少しはずんだ息遣いで「今まで続けてきたので……もう少しだけと……」
前に会ったときも、バレエ教室の帰りだったけれど、バレエを辞めたくて女の子らしい体を手に入れたかった、といっていた。ただ、バレエへの未練も語っており、どうやらそれが勝ったようだ。
「プリマまではいけませんが、次の発表会まで……と、先生とも話しております。私も、ダンスーズとしては少々……。女の子っぽくなりましたでしょう?」
そういってはにかんだ羽沢は、何度か絶頂を迎えたことで頬を上気させていることもあって、女性らしい可愛らしさを身に着けていた。……否、胸なども大きくなってきて、筋肉質の体に女性らしさも併せ持つ、すてきな女性になった……といえるだろう。
「可愛くなったよ」
「もっと……女にして下さいませ♥」
彼女は嬉しそうに、もう片足を上げてきた。それまではもう少し、助言や助力ではなく、こうして色々な手をつかう、助手でありつづける必要もありそうだった。
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