元アサシン高校生が送る青春ラブコメ

@prizon

第零章 プロローグの過去

プロローグ 元暗殺者の登校日

 夢を見た。

 いやまあ、人間ならば誰しも見るんだが。

 問題というか本題は、その内容を覚えてないことだ。

 なにかとてつもなく重要何かを見たような…。まあ、いいか。


どうでもいい、な。


ベットから起き上がり、行く先はもちろん台所。

分かっていると思うが、妹の唯奈は朝寝坊の常習犯である。


なので早めに朝食を作り、妹を起こさなければならない。兄として、これは義務であり、密かな癒やしでもある。


***

「起きろ唯奈。ゲットアップナウ。いや、起きろよ……はあ」


今日もこれか。正直めんどくさい。

妹の唯奈を起こす最大の理由は、寝顔を眺められることが大きい。

 両手を顔のそばに置き、無防備な寝顔をさらす一ノ瀬唯奈…。


 もう、いうことないな

パーフェクト! スリーピング・フェイス。

外見だけは、無邪気な天使と言われても誰も否定できないだろう。内面はシリアルキラー顔負けの邪神だが


この写真を覚醒させるなんて、気が重いな。

くそっ。


***

サラッとした白銀の髪、赤い瞳の少女。

先月から妹になった一ノ瀬唯奈は、思い切り俺の横腹を突き飛ばした。


どうやって起こしたのか。それは忘却の彼方へ

***

「朝食はハンバーグですか」

「ああ。丁度セールをしててな。ちなみに毒味は済んでるよ」


ちなみに、唯奈は俺とは真逆の高血圧だ。


「なんだ・・・毒入りじゃないんですか」

「その残念がるのやめ他方がいいと思うぞ


何度も何度も俺の死を願う、元スパイの妹。

性格があれだが、大切なことに変わりはない。


「大叔父様も勝手ですね。スパイと元暗殺者を同居させるなんて」

「”元”、を忘れてないか」

「…そうでしたね」


一緒に朝食を取る時間。最高だ。

一家団欒、なんてこの現状とは異常なほど乖離している。


まあでも、初めて会ったときは、こうなるなんて思いもしなかった。

まさか、こうして生きて、俺を百階の自殺名所、屋上から突き落とそうとした殺そうとした彼女と朝食を取るなんて、な。


(まったく)


唯奈の横顔を盗み見る。気がついていると思うが。


人生なんて、ほんとに予測不能だ。


頬を緩めて、嘆息した。

***


朝食を済ませ、学校へ向かう。

当然途中入学だが、唯奈は大丈夫だろうか。


「・・・」


緊張している…? 

さっきから表情が消え失せていくんだが。


狩人がいるはずもないんだが。叔父の保護下だし。


「そういえば兄…い……さ」

「無理しなくて結構。好きなほうで呼んでください。」


毎回そう来られても困るし。どんな複雑な兄弟関係なんだよ。


「・・・」

「では、お前」


流石にないだろ


「では、…すみません。少々気分が」


苦しそうに胸を押さえ、あえぐ。

そんなに嫌いなのか?


「なあ、唯―――」


名前を呼ぶ前、うずくまる女の子と、もうスピードのトラックが、視界に入った。


***

ふむ。

俺はいったい何をしているんだ?


全力で、その女の子の元へ飛ぶ。

と同時に車の急ブレーキ音も聞こえてきた。こんなところで死ぬ、こともありえなくもない。


素早く抱きかかえ、迫る車の天井道路の横幅早くさんメートル。

部分を踏み台に、車の進行方向の逆側へ二度目のジャンプ。


急すぎる。流石にこれはきついな。

いや、今はそれよりも、この子の安全が最優先だ。


「大丈夫か?怪我は?」

「…?」


誰?という顔をしている。まだ状況が飲み込めていないんだろう。

クリッとした黒い瞳。年齢は大体5歳位か。見た所怪我はない。

良かった。 とういうかよく見れば……


俺にロリ趣味の片鱗が垣間見えた気がした。


「ふう」

「兄さん」


妹の突き刺すような声で我に返る。

振り返ると、いつの間にかちょっとした野次馬ができていた。目立ちたくない。

今のうちにさっさと―――


「麻莉っ」


立ち上がったところで、緊迫した声が耳に入る。

野次馬をかき分け、出てきた人は、金髪の、おそらく俺と同い年の人。鬼気迫る表情。

どうやらこの子の姉、とかそんな感じだろう。


「麻莉っ。心配したんだよ!もう勝手にいなくならないで・・・」


その子、麻莉とかいう子に抱きついて、泣いている。

面倒なことになりそうな気がする。

唯奈にアイコンタクトを送り、野次馬の間を縫うように逃げる。。


俺を呼び止める声が聞こえた気がした。

俺が振り返ることはなかった。

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