二
喫茶アカサカの最寄駅に着いたのは二十時四十五分だった。百貨店で買った三千円程のクッキーの缶が入った袋を片手に、小走りで喫茶アカサカへ向かう。商店街は相変わらず人通りが多く、特に仕事帰りのサラリーマンの集団が目立った。中には酔っ払って声を荒げているスーツ姿の男性集団もおり、なんとみっともない姿なのだろうと、走りながら軽蔑をした。私もお酒は好きだが、お酒に飲まれる人は嫌いだ。理性を失い、あられもない姿を晒し、周りの人間に迷惑をかける。そして、本人は何も覚えておらず、口では反省の弁を述べるが、結局同じミスを繰り返すのだ。そんな酒臭い集団の間隙を縫うようにして、喫茶アカサカの建つ裏路地へと入ると、ラブホテルの前には薄汚れた白いティーシャツを着た五十代くらいの男と、制服を着た少女が何やら話をしていた。少女は嫌がっている様子もなく、むしろ男性の方が萎縮しているような気さえするので、恐らく援助交際というやつだろう。私は内心呆れながらも止めようとはせずに、黙って二人の横をすり抜けていく。その際少女の方に視線を移すと、いかにも真面目で清楚そうな少女の顔が見て取れた。こんな子も援助交際などに手に染めるのかと、なんだか悲しくなってきた。
そしてもう一つ気付いた点がある。少女の着ている制服は、黒田と同じS高等学校のものだったのだ。それに気が付いた時、ふと黒田の話していた白石さんの特徴を思い出した。黒髪ロングで清楚を絵に描いたような女の子だと。まさしく今見た少女の特徴ではないかと、思わず立ち止まり振り返る。が、二人は丁度ホテルに入っていく瞬間で、少女の姿を再度見ることは叶わなかった。
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