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花火を見た。

線香花火を消えそうな夜の暗さに混ぜ込ませていた。


ぽたりと、落ちた線香花火が花が萎むように小さくなっていった。


花火の大きな音で顔を夜空に向けた。


大きな劇場のスクリーンでヒロインの歌声を聴いたような、美しさがあった。

散っていく火が、声の響きの儚さを想起させた。


今のが最後の花火だったらしい。

とてつもない虚しさに駆られて。水の入ったバケツを、公園にある水飲み場付近の排水溝にぶちまけた。


ここには誰もいない。

私もいない。


生きているのか死んでいるのか分からない。


昔の話をしようと、思った。

私が人を殺したい理由を書こうと思う。

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