生意気な幼女と契約しちゃったけど、これって夢だよね!?
ぼっち猫@書籍発売中!
第1話 帰ったら家に幼女がいた。
僕たちは普段、何事もない日常が当たり前に続くと思っている。
何か特別なことが起きないかな、なんて言ってみても、それは大抵本気ではない。
――少なくとも、僕はそうだった。
しかし現実というのは、僕が思っているよりもずっとおかしなことに溢れているのかもしれない。
だってそうでなければ、そうでなければ誰なんだ、この幼女は。
「…………」
僕はある日、僕の家のソファで偉そうに足を組んで座っている幼女に遭遇した。
そう。ある日アルバイトを終えて家へ帰ると、そこにこいつはいたのだ。
僕は1人暮らしをしている大学生・四葉翔太(よつば しょうた)。
大学生といっても特にやりたいことが決まっているわけではなく、暇なのでゲームや漫画の資金を稼ぐためにアルバイトもしている。
そんな僕のアパートで。
無言で立ち尽くす僕に、この突然現れた幼女は言った。
「遅い! 今何時だと思っている!」
――ええと、僕がおかしいのかな?
これは現実? それとも……
そこまで考えて、僕は自分の愚かさに気付いた。
「ああそっか! これは夢か! なんだなんだ、だよなー」
そうだ、こんな状況、現実であるはずがない。夢に決まっている。
いい歳して、一瞬でも固まって現実だなんて考えた自分が恥ずかしくなった。
「おまえは何を言っているのだ? 帰ってきて早々、寝ぼけてるのか?」
幼女は呆れたようにそう言った。
「ああ、いや、いいんだ。なんでもない」
夢だと分かってしまえば、何を言われようが誰がいようが驚かない。
だって、夢なんだから。
「……おかしな奴だな。それより、ごはんはまだか? おなかがすいたぞ!」
幼女は不満げにそう、僕の方を見る。
「ええっと、はいはい。何がいいかな……」
僕は、そう言って冷蔵庫をあける。
――夢の中でも冷蔵庫はリアルなのか。
冷蔵庫の中身はほぼ空っぽ、冷凍庫に冷凍食品が詰まっているだけ。
いつも通りの、何の変哲もない冷蔵庫だった。
「……これでいっか」
冷凍食品からハンバーグとエビシュウマイをレンジで温め、レトルトのご飯と共に幼女に与える。
「……ふむ」
幼女はじっと見たり、匂いを嗅いだりしていたが、気に入ったのか食べ始めた。
そして、
「なかなかに美味しいぞ!」
なぜか偉そうに、そう評価してくる。
――にしても口の悪い幼女だな。
もっとこう「おにいちゃん♪」とかないのか?
僕は呆れながら見ていたが、見ているのも飽きたので聞いてみた。
「おまえ名前は? どっから来たの?」
「ふふん♪ 私は、魔女界の姫なのだ! 名前はソルエ。おまえを下僕にしに来た!」
だからなんでいちいち自慢げなんだ。
しかも下僕って。
まあ夢の中だしいいけどさ。
「よーし、分かった。いいだろう」
僕はそう、軽く受け流した。だってどうせ夢だし。
しかし。
「光栄に思え。私は姫なのだからな! さ、分かったら、この爪に口づけをしろ」
幼女――ソルエは堂々とそう、手を差し出してきた。
爪をきちんと切ってある、まだ小さな幼い手。
そう。幼い手。相手は仮にも幼女だ。
――え、いや何これ?
いくら夢の中って言ったって、これやったら僕変態だよ?
すべては脳が作りだした偽りの世界とはいえ、さすがに固まる。
「? どうした?」
ソルエは不思議そうに、僕の方を見ている。
「えっと、それはちょっとさすがに……」
僕はそう、やんわりと断る。
――というか、早く覚めてくれ。
しかしそんな願いも虚しく。
「私の命令は絶対だぞ! ほら、早くしろ!」
ソルエはあくまで強引に、僕に口づけを要求してくる。
夢の中なんだから無視すればいいのに、なぜだかそれができない。
――ああそっか。
そうだ、僕はいわゆるヘタレなんだった。
自分でそう納得して悲しくなる。
どうせ彼女いない歴=年齢だよっ!
ああもう、こうなったらヤケだ!!
僕はソルエの爪に、唇をおとした――。
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